建設業許可の申請で使う、工事の契約書・注文書・請求書の残し方

許可の申請で見られるのは、一件ごとの工事の事実が書類でつながっているかどうかです。契約から入金までを一続きで残す考え方を整理します。

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経験は十分なのに、見積書とチャットの履歴しか残っていない。許可を取ろうとして初めて、書類が足りないと気づく事業者は少なくありません。

このページの要点

  • 許可の基準(建設業法7条1号・2号)の経験は、使用者の証明書などで示す。その裏付けとして、契約書・注文書・請求書・入金の記録が一続きで残っているかが問われると見られる。
  • 見積書と口頭・チャットだけで回してきた場合、後から整えるときは作成日を正しく書く。契約の日付を遡らせた書面は作らない。
  • 許可を取るまでは軽微な建設工事(500万円に満たない。建築一式は1,500万円)の範囲で受注する。許可後は契約書の写しの保存が義務になる。
  • 個人事業主の期間は、請求書の名義・口座・契約書の当事者の切り替わりが追えるようにしておく。必要書類の基準は行政庁の手引きで確認する。

結論:許可の申請で見られるのは、一件ごとの工事の事実が書類でつながっているかどうか

建設業の許可を受けようとするとき、これまでに自分が行ってきた工事の経験を、書類で示す場面があります。建設業法7条は、許可の基準として、建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有すること(1号)と、営業所ごとに営業所技術者を専任の者として置くこと(2号)を挙げています。2号の営業所技術者の要件には、許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し10年以上実務の経験を有する者という形(2号ロ)があり、その実務の経験は、建設業法施行規則3条2項2号が「実務の経験を証する別記様式第九号による使用者の証明書」を挙げているように、証明書の形で示します。

ただし、証明書は、自分や使用者が「経験があります」と申告する書面です。その申告を裏付けるものとして、実際に請け負った工事の契約書、注文書、請書、請求書、入金の記録といった、当時の取引の書類を行政庁から確認される場面があると見られます。そのときに、見積書は残っているが契約書も注文書もない、請求書はあるが入金の記録と工事の内容が結びつかない、という状態だと、経験そのものは本物でも、示すのに苦労します。

このページは、法令の条文と一般的な考え方に基づく解説です。許可の申請で、どの書類を何年分、どのような形で求められるかは、許可を受ける行政庁(二以上の都道府県に営業所を置くなら国土交通大臣、一つの都道府県にだけ置くならその都道府県知事。建設業法3条1項)が定める手引きによって決まり、行政庁ごと、許可を受ける業種ごと、申請の内容ごとに異なることがあります。そのため、ここでは書類の種類や年数の具体的な基準は書かず、「後から確認資料になる形で工事の書類を残す」という考え方と、許可を取る前後の契約書の整え方に絞って整理します。申請の手続そのものの解説は、このページの対象ではありません。

  • 契約書、注文書・請書、請求書、入金の記録は、一件の工事につき一続きで残す。工事名、工事の場所、注文者、請負代金、工期、工事の内容が、どの書類からも読み取れるようにする。
  • 見積書と口頭、チャットでの発注だけで回してきた場合は、残っている当時のやり取りを散逸させずに保存する。後から作る書面には、作成した日を正しく書く。契約の日付を遡らせて作ってはならない。
  • 許可を取るまでの受注は、軽微な建設工事(建築一式工事以外は一件の請負代金が500万円に満たない工事)の範囲に収める。許可を取った後は、契約書の写しの保存などが建設業法上の義務に変わる。

契約書の記載事項そのものは建設業法19条の記載事項で、追加工事の書面の作り方は追加・変更工事の書面で取り上げています。このページは、それらの書面を「申請の場面で使える形で残す」という視点に絞ります。

許可の申請で工事の書類が使われる場面

許可の申請で工事の経験が問われる場面は、一つではありません。基準の条文をたどると、少なくとも次の三つの場面で、過去の工事の書類が関係してきます。

許可の基準と、工事の書類が関係する場面

場面条文示す内容工事の書類との関係
経営業務の管理の経験建設業法7条1号、同法施行規則7条1項1号、3条1項1号常勤役員等のうち一人が、建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者であることなど(施行規則7条1項1号イ)どの期間に、どの建設業を営み、どの工事を請け負っていたかを示す資料として、契約書・注文書・請求書が使われると見られる。個人で営んだ期間は、事業を営んでいたことを示す資料との組み合わせになる。
営業所技術者の実務経験建設業法7条2号ロ、同法施行規則3条2項2号許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し10年以上実務の経験を有すること。使用者の証明書(別記様式第九号)で示す証明書の記載(工事名・期間・業種)を、実際の工事の契約書・請求書で裏付けられるようにしておく。
財産的基礎・誠実性建設業法7条3号・4号請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかでないこと。請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有しないことが明らかでないこと契約の履行状況が分かる書類が間接的に参考になる。具体的な確認の仕方は行政庁の手引きによる。

経営業務の管理の経験と、営業所技術者の実務経験は、別の要件です。同じ工事の書類が両方の裏付けに使われることもありますが、期間の数え方や必要な書類は異なる可能性があります。

許可を取った後にも、工事の書類は使われ続けます。許可は5年ごとの更新を受けなければ効力を失い(建設業法3条3項)、毎事業年度の終了後には、事業年度終了の時点における書類などを、毎事業年度経過後4か月以内に提出することが求められます(同法11条2項)。この毎年の提出書類には、工事経歴書と、直前3年の各事業年度における工事施工金額を記載した書面(同法6条1項1号・2号)が含まれ、その元になるのは、その年に請け負った工事の契約書や請求書、入金の記録です。つまり、許可の申請のために工事の書類を整えることは、許可を取った後の毎年の届出の準備にもなります。

一件の工事を示す「書類の一続き」を残す

確認資料になるのは、一枚の書類ではなく、一件の工事について、契約から入金までが一続きでたどれる書類の組です。どの書類にも共通して、次の六つが読み取れるようにしておくと、書類どうしを結びつけやすくなります。

  1. 工事の名称(現場の名前や、工事の種類が分かる呼び名)
  2. 工事の場所
  3. 注文者の名称(法人名か、個人の氏名か)
  4. 請負代金の額(消費税の扱いが読み取れるようにする)
  5. 工事の期間(着工と完成の時期)
  6. 工事の内容(どの種類の工事か。許可を受けようとする業種に当たる工事かが読み取れる書き方)

工事の内容は、とくに大切です。建設業の許可は、別表第一に掲げる建設工事の種類ごとに、それぞれの建設業に分けて与えられます(建設業法3条2項)。したがって、「内装工事一式」や「改修工事」といった書き方だけでは、どの業種の経験を示す工事なのかが、書類から読み取りにくくなります。たとえば、大工工事、内装仕上工事、塗装工事、電気工事、管工事など、実際に行った工事の中身が分かる書き方にしておくと、後から見たときに、どの業種の実績として整理できる工事なのかを判断しやすくなります。

一件の工事の書類の一続き(残しておく順序)

  1. 見積書宛先・日付・内訳が分かる形で保存する。口頭やチャットで金額を伝えた場合も、そのやり取りの記録を残す。
  2. 契約書/注文書・請書工事名・場所・代金・工期・内容が入った書面。双方が保存する。
  3. 変更の書面追加・変更があれば、増減額と工期の変更を書面に残す。
  4. 完成・引渡しの記録完成した日と引渡しの日が分かる記録。引渡書、検査の記録、完成写真など。
  5. 請求書契約書の工事名・金額と対応させる。分割して請求した場合は、回数と各回の対象を明記する。
  6. 入金の記録通帳の入金欄や、領収の記録。請求書の金額・日付と対応させる。

請求書と入金の記録は、とくに見落とされがちです。工事が終わると請求書を出して入金を確認し、それで一件が終わったつもりになりますが、請求書の宛名や但し書きが「工事代金として」のようにだけ書かれていると、どの工事の代金なのかが、後から分からなくなります。請求書にも、契約書や注文書と同じ工事の名称を書いておくと、書類の一続きが崩れません。入金の記録についても、通帳に記載される入金の名義が注文者本人でない場合(家族や関連会社の名義で振り込まれた場合など)、そのことが分かるメモを残しておくと、結びつけやすくなります。

追加工事や変更工事が出たときの書面は、契約書とは別の書類になりますが、これも一続きの一部です。当初の契約の請負代金が、変更後はいくらになったのか、変更後の工期はいつまでなのかが、書面で追えるようになっていないと、請求書の金額と契約書の金額が一致せず、どちらが実際の請負代金なのか分からなくなります。変更の書き方は追加・変更工事の書面のとおり、変更後の工事の内容、増減額、工期、元の契約の適用を書く形が基本です。

見積書と口頭・チャットだけで回してきた場合に起きる問題

小規模な工事では、見積書を出して、「それでお願いします」という返事をもらい、契約書も注文書も作らずに着工する、という進め方が珍しくありません。民法522条2項は、契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しないと定めているので、口頭の合意でも、請負契約そのものは成立します。しかし、そのことと、後から確認資料として使えるかどうかは、別の問題です。

まず、建設業法19条1項は、建設工事の請負契約の当事者は、契約の締結に際して、工事内容、請負代金の額、工事着手の時期及び工事完成の時期などの事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならないと定めています。この規定は、許可を受けているかどうかを区別せずに、建設工事の請負契約の当事者に及ぶ形で書かれています。見積書と口頭で回してきた工事は、19条の書面が交わされていない可能性が高く、許可の有無にかかわらず、書面の整備が必要な状態にあります。

次に、確認資料としての弱さがあります。見積書は、請負契約の成立後に出されるものではなく、契約の前の段階の書類です。見積書があるだけでは、その工事を実際に請け負ったのか、請け負ったとして最終的な請負代金はいくらだったのか、工事を完成させたのか、が書類からは分かりません。チャットでの発注も同様で、画面のやり取りが残っていても、その工事の請負代金や工期が、やり取りのどこで確定したのかが読み取りにくくなります。チャットアプリで過去のやり取りを遡れる期間には限りがあり、端末の変更や機種の入れ替えで、記録そのものが失われることもあります。

すでにこの状態で何件もの工事を重ねてきた場合に、後から整える方法として、次の三つが考えられます。ただし、後から書面を整えるときは、日付の扱いに厳格な注意が必要です。契約を結んだ日、工事をした日、書面を作った日は、それぞれ別の日です。後から作る書面の日付を、契約を結んだ当時の日付に遡らせて作ると、事実と異なる書類を作ることになります。行政庁に提出する書類に事実と異なる記載があれば、不正の手段で許可を受けたとして、許可が取り消される事由にもなり得ます(建設業法29条1項7号)。

  1. 当時のやり取りを、そのまま保存し直す。チャットは、日付が分かる形で画面を保存するか、書き出して保存する。見積書、請求書、入金の記録は、元のファイルと控えを揃える。
  2. 注文者に協力してもらえるときは、「当時の取引について確認する書面」を新たに作る。この書面には、作成した日を正しく書き、書面の中で、確認の対象とする工事の名称、時期、請負代金の額を書く。「当時作成した契約書」という体裁にしない。
  3. これから請け負う工事から、契約書または注文書・請書を交わす運用に切り替える。後から整えるより、今後の分を漏れなく残す方が、書類としての信頼性は高い。

二つ目の方法は、確認の書面を作るだけでは足りない場合もあります。そのような書面を確認資料として受け付けるかどうかは、行政庁の判断によるところが大きく、受け付けられる範囲も行政庁ごとに異なると見られます。これらは「後から整える方法」であって、「遡って契約書を作る方法」ではないことを、まず押さえてください。

許可を取るまでの軽微な工事の範囲での受注と、許可を取った後に変わる契約書の記載

建設業を営もうとする者は許可を受けなければなりませんが、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りではありません(建設業法3条1項ただし書)。その軽微な建設工事は、建設業法施行令1条の2第1項で、工事一件の請負代金の額が500万円(建築一式工事の場合は1,500万円)に満たない工事、または建築一式工事のうち延べ面積が150平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事とされています。「以下」ではなく「満たない」なので、ちょうど500万円の工事は、軽微な建設工事に当たりません。

同じ施行令1条の2は、請負代金の額の数え方についても定めています。同一の建設業を営む者が、工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額で判断します。ただし、正当な理由に基づいて契約を分割したときは、この限りではありません(2項)。また、注文者が材料を提供する場合には、その市場価格(市場価格及び運送賃)を請負代金の額に加えたものを基準にします(3項)。追加工事が重なって、最初の契約は軽微でも、合計すると基準に達してしまうことがあります。この点は追加・変更工事の書面でも触れています。

許可を取る前の期間に請け負った工事は、軽微な建設工事の範囲に収まっていることが前提です。この範囲を超える工事を許可なしで請け負っていれば、その事実自体が問題になります。実績の整理をするときには、過去の工事が軽微な範囲に収まっていたかどうかも、書類から確認できるようにしておく必要があります。

許可の前後で変わる、契約書と書類の扱い

項目許可を取る前許可を取った後
契約書の書面(19条)許可の有無を問わず、請負契約の当事者に求められる同じ。許可業者が19条に違反した場合は、監督上の処分の対象になり得る(19条のページ)
契約書の写しなどの保存建設業法上の保存の義務としては定められていない(確認資料としては残しておく意味がある)建設業者は帳簿を備え、帳簿と営業に関する図書を保存する(建設業法40条の3)。帳簿への添付書類に、19条1項・2項の書面またはその写しが含まれる(施行規則26条2項1号)
保存の期間建設業法上の定めはない帳簿と添付書類は引渡しから5年間(住宅を新築する工事は10年間)、営業に関する図書は引渡しから10年間(施行規則28条)
注文者の許可番号記載の定めはない帳簿の記載事項に、注文者が建設業者であるときは、その者の許可番号がある(施行規則26条1項2号)。契約書にも許可番号の欄を設けると記載しやすい
軽微な工事の範囲この範囲に収める許可を受けた業種の工事は、金額にかかわらず請け負える。許可のない業種の工事には、軽微な建設工事の範囲という制約が残る

表の「許可を取った後」の欄を見ると、許可を取った時点から、これまで任意で行ってきた書類の保存が、法令上の義務に変わることが分かります。許可を取る前から、契約書の写しを保存し、請求書や入金の記録と結びつけておく運用は、許可を取った後にそのまま引き継げます。許可の前後で運用を二度作り直すより、最初から許可業者と同じ水準の書類の残し方にしておく方が、手間は少なくなります。

許可を取った後は、契約書の運用にも意識したい点があります。たとえば、注文者が建設業者である場合の許可番号は帳簿の記載事項なので、契約書に許可番号を書く欄があると記載しやすいこと、下請に出す工事の規模によって、特定建設業の許可が必要になる場合があること(建設業法3条1項2号)を、契約書や発注の運用で意識することです。下請契約の書面や、元請としての責任は下請・一人親方との契約で詳しく見ています。

一人親方・個人事業主の期間の実績をどう残すか

許可の申請を考える人の多くは、法人を設立する前に、個人事業主や一人親方として工事を請け負ってきた期間があります。その期間の経験を許可の申請で使いたいときは、個人として請け負った工事の書類が、確認資料になります。ここで気をつけたいのは、書類上の名義の一貫性です。

  • 個人事業主として工事を請け負った期間は、請求書の発行名義が個人の氏名か、屋号か、を統一しておく。屋号を使っていた期間と使っていない期間が混在していると、同じ人の実績かが読み取りにくい。
  • 元請や取引先の下で、日当などの形で働いていた期間は、請負として工事を完成させていたのか、人手として働いていたのかで、書類の性格が変わる。請負の工事として経験を示したいなら、請負契約として契約書または注文書があるかが重要になる。
  • 法人を設立した後の期間と、それ以前の個人の期間は、別の名義の実績になる。法人設立の前後で、請求書の名義、入金口座、契約書の当事者が、どこで切り替わったかが書類から分かるようにしておく。
  • どの業種の経験かを区別しておく。複数の業種の工事を請け負ってきた場合に、許可を受けようとする業種に当たる工事だけを抜き出せるよう、工事の内容を具体的に書いておく。

実務の経験は、使用者の証明書で証するものとされています(施行規則3条2項2号)。一人親方として独立していた期間は、自分自身が事業主なので、証明の取り方が、会社で雇われていた期間とは異なります。個人事業主としての期間をどのように証明するかは、行政庁の手引きによって扱いが分かれる可能性があるため、申請先の手引きの確認が欠かせません。

また、一人親方として請け負う契約の性質は、請負であることが前提です。契約書の名称が「業務委託契約書」であっても、報酬を得て建設工事の完成を目的として締結する契約は、委託その他いかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の請負契約とみなして建設業法の規定が適用されます(建設業法24条)。そのため、名称だけで判断せず、契約の中身が建設工事の完成を目的としているかを確認します。一人親方への指示のしすぎが問題になる点は、下請・一人親方との契約で扱っています。

許可を取った後の変更届・決算の届出との関係(概要)

許可を取った後の手続の細部は、このページの対象ではありませんが、工事の書類との関係だけを、条文で確認できる範囲で整理します。

許可を取った後に、工事の書類と関係してくる条文

条文内容工事の書類との関係
建設業法11条1項許可申請書の記載事項のうち一定のものに変更があったときは、30日以内に変更届出書を提出する営業所や役員の変更などの届出。工事の書類とは直接つながらない
建設業法11条2項毎事業年度終了の時における書類などを、毎事業年度経過後4か月以内に提出するその事業年度の請負代金などの実績の元になるのは、その年の契約書・請求書・入金の記録
建設業法11条4項・5項営業所技術者が置かれなくなったとき、許可の基準を満たさなくなったときなどは、2週間以内に届け出る技術者の経歴を裏付ける実務の経験の書類を、保管しておく意味がある
建設業法3条3項許可は5年ごとに更新を受けなければ効力を失う更新の際にも、工事の実績が参照される場面がある(行政庁の手引きによる)
建設業法40条の3、施行規則26条・28条営業所ごとに帳簿を備え、帳簿と営業に関する図書を保存する契約書の写し、完成図、打合せ記録、見積書などを、一定期間保存する

表のとおり、許可を取った後は、工事の書類が毎年の届出や帳簿の保存に直結します。契約書の写しなどを保存する場所を、営業所ごとに決めておき、工事が完成して引渡しをした日を基準に、いつまで保存するかを管理する運用が必要になります。契約書の記載や、請求書の様式を整える段階から、この保存の運用を意識しておくと、許可を取った後に慌てずに済みます。

ここまでの内容を自社の書類に当てはめるために、許可の申請を見据えて工事の書類を点検するときに使える問いを、一覧にまとめます。一般的な点検の観点であり、特定の行政庁の基準ではありません。

ヒヤリング点検表 工事の書類の現状点検

  1. 請け負った工事のうち、契約書または注文書・請書がそろっているものは、どのくらいあるか。書面がそろっていない工事の数が分かれば、書類を補う優先順位が決められる。
  2. 見積書と口頭、チャットだけで請け負った工事は、どの期間のものか。確認資料として弱い期間がいつからいつまでかを把握し、残っているやり取りの保存を急ぐ。
  3. 請求書に、契約書と同じ工事の名称と金額が書かれているか。契約書と請求書が結びつかないと、一続きの書類として使いにくい。
  4. 入金の記録(通帳など)と請求書を、一件ずつ対応させられるか。入金が一括のまとめ払いの場合は、どの請求書の分かを明記したメモがあると結びつけられる。
  5. 個人の期間と法人の期間で、請求書の名義や口座が切り替わった時期は分かるか。名義の切り替わりが書類から追えると、期間ごとの実績を整理しやすい。
  6. 過去の工事は、軽微な建設工事の範囲に収まっていたか。追加分を含めた合計はいくらか。許可なしで請け負える範囲を超えていなかったかを、書類から確認できる必要がある。
  7. 書類の保存場所と、保存の期間のルールは決まっているか。許可を取った後は、保存が建設業法上の義務になる。

点検の結果、書類が足りないと分かったら、今後の工事から運用を変えるのが現実的です。過去の分は、残っている資料の保存から始めます。

起きがちなこと:許可を取ろうとして初めて、書類が足りないと気づく

最後に、許可の申請を考える事業者に起きがちなことを、まとめます。いずれも、工事の経験が足りないのではなく、経験を示す書類が整っていないことから生じる問題です。

許可の申請の準備は、特別な書類を新しく作ることではなく、日々の工事の書類を、一続きでたどれる形で残す習慣に尽きます。見積書、契約書、変更の書面、完成の記録、請求書、入金の記録を、一件の工事ごとにまとめて保管し、工事の名称と金額を、どの書類にも同じ形で書く。この基本が、許可の申請でも、許可を取った後の毎年の届出でも、また取引先との紛争の場面でも、書類の信頼性を支えます。検査と引渡しの記録の残し方は検査・引渡し条項、契約の途中終了で出来高を精算する場面での書類の役割は解除・出来高精算でも取り上げています。

よくあるご質問

建設業許可を取る前の工事でも、契約書は必要ですか。

建設業法19条1項は、建設工事の請負契約の当事者は、契約の締結に際して工事内容、請負代金の額、工期などを書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならないと定めており、許可の有無を区別していません。許可を取る前の工事でも、契約書または注文書・請書で書面を整える意味があります。民法522条2項により、口頭の合意でも契約自体は成立しますが、後から確認資料として使えるかどうかは別の問題です。

見積書とチャットだけで受けてきた過去の工事は、実績として使えませんか。

使えるかどうかは、許可を受ける行政庁の判断によります。見積書とチャットだけでは、実際に請け負ったのか、最終の請負代金はいくらか、完成したのか、が書類から分かりにくいので、請求書、入金の記録、完成の記録など、ほかの書類と組み合わせて示すことが考えられます。後から書面を作る場合は、作成した日を正しく書き、契約の日付を遡らせた書面を作らないことが大切です。行政庁に事実と異なる記載を提出すれば、不正の手段による許可として取消しの事由にもなり得ます(建設業法29条1項7号)。

軽微な建設工事は、500万円以下の工事ですか。

「以下」ではなく「満たない」です。建設業法施行令1条の2第1項は、工事一件の請負代金の額が500万円(建築一式工事は1,500万円)に満たない工事、または建築一式工事のうち延べ面積が150平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事としています。契約を分割しても正当な理由がなければ合計額で判断され(同条2項)、注文者が材料を提供する場合はその市場価格を加えた額が基準になります(同条3項)。

個人事業主だった期間の工事は、許可の申請で使えますか。

個人事業主として請け負った工事の期間も、経験を示す対象になり得ます。ただし、どの書類でどのように示すかは、許可を受ける行政庁の手引きによって扱いが分かれる可能性があります。請求書の名義(氏名か屋号か)、入金口座、契約書の当事者が、個人の期間と法人の期間でどこで切り替わったかが書類から追えるようにしておくと、整理しやすくなります。

許可を取った後は、契約書をどのくらい保存する必要がありますか。

建設業法40条の3は、建設業者に、営業所ごとの帳簿の備付けと、帳簿及び営業に関する図書の保存を求めています。建設業法施行規則28条は、帳簿と添付書類の保存期間を、請け負った建設工事ごとに目的物の引渡しをしたときから5年間(発注者と締結した住宅を新築する建設工事は10年間)、営業に関する図書を引渡しから10年間としています。帳簿への添付書類には、19条1項・2項の書面またはその写しが含まれます(施行規則26条2項1号)。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の契約への当てはめは、工事の内容や取引の実態によって結論が変わることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索

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