このページの要点
- 確認書は請負契約本体との優先関係と、値引きの位置づけ(代金の減額か、協力の対価か)を最初に決める。値引きの額は請負代金の欄と数字をそろえる。
- 運用基準では、事業者が第三者に自らの商品の表示をさせ、第三者の自主的な意思による内容と認められなければ事業者の表示になる。対価には経済上の利益も含まれる。
- 広告であることは「広告」「PR」「値引きを受けて投稿」などで明瞭に表示する。規制されるのは事業者で、表示の責任は住宅会社にある前提で作る。
- 不履行の返還は、協力の項目ごとに値引きの配分額を決める。公開する部屋、所在地が分かる情報、削除の請求、売却時の扱いも書く。
結論:値引きと引換えの協力は、「何を、いつまで、どの範囲で」と「広告であること」を書面で決める
注文住宅の会社が、施主に請負代金の値引きをする代わりに、完成した家を見学会に使わせてもらう、施主にSNSや動画で家づくりを発信してもらう、という取決めをすることがあります。いわゆるモニターハウスです。工事の契約とは別の付属の確認書で定めることが多く、契約書の本体には現れません。しかし、ここには、請負契約としての値引きの扱い、広告としての表示の規制、施主の住まいの公開という、性質の違う三つの問題が同居しています。
住宅会社と施主のあいだの広告協力の確認書では、論点が、この三つの問題にまたがります。確認書で決めておく中心は、次の五つです。第一に、請負契約本体との関係(優先順位と、値引きの位置づけ)。第二に、協力の中身と範囲(投稿の媒体、回数、期間、見学会の回数と時間、リンクの設定)。第三に、投稿が広告であることの表示と、内容の事前確認。第四に、協力が果たされなかったときの値引き相当額の扱い。第五に、住まいの公開による不利益の防止と、引渡し後や売却時の扱い。
このページは、住宅の値引きと引換えの協力に絞って書きます。広告全般やインフルエンサーの投稿の一般論は別のガイドで扱うため、ここでは触れません。請負契約の支払条件は代金の支払設計、契約書面の記載事項は建設業法19条の記載事項、消費者向けの契約の注意点はリフォームの訪問販売とクーリング・オフに整理してあります。
確認書の位置づけ:請負契約本体との関係を最初に決める
確認書は、請負契約の一部なのか、別の契約なのか。ここを曖昧にしたまま署名すると、トラブルのときに、どの書面の定めが効くのかで争いになります。注文住宅の請負契約は、通常、契約書、約款、見積書、仕様書、図面で構成されています。確認書を、そのうちのどこに位置づけるのかを決めます。
- 付属の確認書とする場合:「本確認書は、令和○年○月○日付工事請負契約(以下「原契約」という。)に付随するものである」と書き、原契約の代金、工期、引渡しの定めを、確認書で変えないことを明示する。
- 優先関係:原契約の約款と確認書の内容が食い違うときは、どちらを優先するのかを書く。広告協力に関する事項は確認書、工事に関する事項は原契約を優先する、という分け方が分かりやすい。
- 値引きの位置づけ:値引きは、請負代金の額を減らす約束なのか、協力に対する報酬なのかを決める。請負代金から差し引くと書く場合は、請負契約書の代金の欄の金額と、確認書の値引き額の関係を、数字で一致させる。
- 工事の完成や引渡しとの関係:協力の義務は、引渡しの前から始まるのか、後に始まるのか。工事の遅れが生じたとき、見学会の日程が連動して動くのかを書く。
もう一つ、決めておきたいのが、協力の不履行と請負契約そのものの関係です。施主が見学会に応じなかったことを理由に、会社が工事を止める、引渡しを拒む、残代金の支払を急がせる、という運用は、請負契約の側の約束(工事の完成と引渡し、代金の支払)と、確認書の側の約束(広告協力)を混ぜてしまいます。確認書には、協力の不履行は値引き相当額の精算で処理し、工事の完成、引渡し、契約不適合責任には影響しない、と書いておくのが基本です。逆に、会社の工事の遅れや不具合が、施主の協力の義務に影響しないことも書いておくと、施主の側の不安も減ります。両者を切り離す定めは、検査・引渡しの場面で、引渡しの条件を明確にする助けにもなります。
建設業法19条は、工事の請負契約の当事者に、請負代金の額などを書面に記載して相互に交付することを求めています(1項2号)。契約の後で、値引きなど、記載事項に当たる内容を変更するときは、その変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければなりません(2項)。値引きの額が契約後の確認書で決まるのであれば、確認書は、請負代金の額を変更する書面としての役割も持ちます。署名欄と日付を整えておくのは、このためです。
協力の範囲:値引きに見合う量を、数えられる形で書く
値引きと引換えの協力は、協力の量が曖昧だと、事業者は「もっとやってほしい」と感じ、施主は「そんなにやるとは聞いていない」と感じます。次の表は、確認書に書く項目と、決めておく内容を整理したものです。
協力の範囲として決める項目
| 項目 | 決めておくこと | 曖昧だと起きること |
|---|---|---|
| 投稿の媒体 | 動画投稿サイト、写真投稿サイトなど、使う媒体を特定する。 | 施主が別の媒体を使うと、協力に当たるのか分からない。 |
| 投稿の回数と時期 | 引渡し前、引渡し後の別に、最小の回数と、投稿の期限を書く。 | 「適宜投稿する」では、足りないかどうかを測れない。 |
| 投稿の内容 | 家づくりの経過、完成後の住み心地など、取り上げる範囲と、会社名の表示の仕方。 | 会社が望む内容と、施主が書く内容がずれる。 |
| 見学会 | 回数、1回の時間、人数の上限、事前の予約、立会いの有無、実施する曜日の希望。 | 施主の生活に支障が出る頻度の見学が入る。 |
| リンクの設定 | 会社のサイトや資料請求ページへのリンクを、投稿に付けるかどうか。 | リンク経由の問合せが、広告の効果として評価される。 |
| 期間 | 協力の期間を、引渡しから何年間と区切る。更新するかどうかも書く。 | 期限がなく、いつまでも続く。 |
| 費用 | 見学会の準備、清掃、撮影に要する費用を、誰が負担するか。 | 施主が自腹で清掃や撮影をする。 |
回数や期間は、値引きの額と見合うように決めます。値引きの額の根拠が説明できるほど、協力の範囲に納得が得られます。
投稿の表示:広告であることを、施主ではなく会社の責任で明らかにする
この確認書の中心的な論点が、景品表示法のステルスマーケティング規制です。消費者庁は、景品表示法5条3号に基づく告示として、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年内閣府告示第19号)を指定し、令和5年10月1日から施行しました。あわせて、同庁長官決定として運用基準が公表されています。以下は、公表されている告示と運用基準の趣旨を整理したものです。個別の判断では、運用基準と消費者庁の公表資料の原文で確認してください。
施主の投稿が、事業者の表示になる場合
運用基準は、外形上第三者の表示のように見えるものが事業者の表示に当たるのは、事業者が表示内容の決定に関与したと認められる場合、つまり、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合であると説明しています。事業者が第三者に、第三者のSNS上に自らの商品や役務に係る表示をさせる場合は、その例の一つとされています。明示的な依頼や指示がなくても、事業者と第三者の間に表示内容を決定できる程度の関係性があり、客観的な状況から自主的な意思による内容とは認められない関係性があれば、事業者の表示とされます。
その判断では、事業者と第三者の具体的なやり取りの内容、事業者が提供する対価の内容と主な提供理由(宣伝する目的かどうか)、関係性の継続などが総合的に考慮され、対価には、金銭や物品に限らず、対価性のある経済上の利益が含まれる、とされています。値引きと引換えに投稿や見学会への協力を約束する確認書は、この「対価」と「宣伝する目的」の要素が、書面の上ではっきり表れる形です。値引きも、経済上の利益として扱われる可能性があると考えて準備しておくのが安全です。
広告であることが明瞭な表示とは
運用基準は、事業者の表示であることが明瞭となっていない例として、表示が部分的にしかされていない場合、長い動画の中間や末尾にだけ表示する場合、一般消費者が認識できないほど短い時間の表示、周囲の文字より小さい表示や薄い色の表示、大量のハッシュタグの中に埋もれさせる表示などを挙げています。明瞭となる例としては、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言による表示や、「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文章による表示を挙げ、これらの文言を使っていても、表示内容全体から明瞭でなければ足りない場合がある、とも注記しています。
条文例
第○条(投稿の表示)
- 乙(施主)は、本確認書に基づいて行う投稿(動画、写真、文章その他の形式を問わない。)には、本確認書に基づき甲(住宅会社)から請負代金の値引きを受けて行う投稿であることが、投稿を見た者に明瞭に分かるように表示する。
- 前項の表示は、「広告」「PR」「甲から値引きを受けて投稿している」その他、投稿の冒頭など見やすい位置に、読み取れる大きさと時間で行い、他の情報やハッシュタグに紛れ込ませない。動画の場合は、冒頭を含め、視聴者が認識できる時間、表示する。
- 甲は、前項の表示の具体的な文言と位置を、投稿の前に乙に通知する。
- 乙は、本確認書に基づかない自らの投稿については、本条の表示を要しないものとする。ただし、甲との関係を偽って、第三者の感想であるかのように装ってはならない。
運用基準は、規制されるのは事業者(広告主)であると位置づけています。確認書は、施主に義務を課す形をとっても、表示の責任は、住宅会社にあることを前提に作ります。
事前確認の範囲:内容を縛りすぎない、でも誤りは直す
住宅会社は、施主の投稿に事実と違うことが書かれることを避けたい。施主は、自分の言葉で自由に書きたい。確認書は、この二つのあいだで、事前確認の範囲を決めます。ここでも、運用基準が参考になります。運用基準は、事業者が第三者の表示内容について依頼や指示を行い、第三者の自主的な意思による表示内容とは認められなければ、事業者の表示となり、広告であることの明示が必要になる、としています。事前に内容を確認し、修正を求めることは、関与の度合いを高める方向に働くため、確認する以上は、広告であることの表示とセットで行う、という整理が自然です。
ヒヤリング点検表 事前確認の範囲を決めるための問い
- 事前に確認するのは、事実の誤りだけか、表現の好みまで含むか。性能の数値、法令の説明、会社名や商品名の誤りは直す必要がある。感想の中身や評価の高低まで指示すると、施主の自主的な意思が失われる。
- 悪い点や不満を書くことを禁じるか。禁じる定めは、施主の表現を過度に縛り、自主的な意思による内容とは認められない方向に働く。
- 他社を誹謗する内容の扱い。他社との比較や誹謗は、別の法令の問題にもなる。会社が指示して書かせると、会社の表示になる。
- 確認の期間と、修正の依頼の方法。投稿の前に、会社が確認するのに何日かかるか。急ぎの投稿ができるかどうか。
- 施主が確認を待たずに投稿したときの扱い。投稿後に誤りを見つけたときの訂正の依頼の方法と、訂正までの期限を書く。
契約書の文言としては、「事実に反する記載、会社が提供した情報の誤り、法令に違反する表現があるときは、乙は、甲の求めにより訂正する」にとどめ、感想や評価は乙の自由とする、という書き方が、双方にとって無理がありません。
協力が果たされなかったとき:値引き相当額の扱い
施主が協力を果たさなかったとき、会社は値引きを返してほしいと考えます。これを確認書にどう書くかは、慎重に決める必要があります。民法420条は、当事者が債務の不履行について損害賠償の額を予定できること(1項)、違約金は賠償額の予定と推定されること(3項)を定めています。「協力をしなかったときは、値引き相当額を返還する」という定めは、違約金の性質を持つ可能性があります。
施主が消費者である場合には、消費者契約法9条1項1号が、消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項について、これらを合算した額が、同種の消費者契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるときは、その超える部分を無効とする、と定めています。協力をしなかったことを理由とする返還の条項が、この規定の対象になるかどうかは、条項の書き方(解除に伴うものか、不履行に伴うものか)と実態による判断になります。そのため、値引き相当額の全額の返還を一律に定めるよりも、協力した割合に応じた返還にするほうが、争いになりにくいと考えられます。
REV.書き方の例(一般的な例) 協力が果たされなかったときの返還
1返還の範囲
理由全額返還は、わずかな不履行でも全額を失う内容になり、消費者契約法10条(解除に伴う返還と評価されるときは9条1項1号)の問題を招きやすい。項目ごとの配分を別表にしておくと、算定の根拠が示せる。
2不履行の判断
理由「甲が判断したとき」では、会社の一方的な判断で返還が生じる。是正の機会を与える手順を入れる。
3やむを得ない事情
理由生活の事情で協力できなくなる場合に、全額返還ではなく、内容の変更で解決する道を残す。
住まいの公開:プライバシーと、引渡し後・売却時の扱い
施主の家を見学会に使い、動画で家の中を公開することは、施主とその家族の生活に直接影響します。確認書では、公開する範囲、公開しない範囲、第三者に分かる情報の扱いを決めておきます。
- 公開する範囲:外観、リビング、キッチンなど、公開する部屋を特定する。寝室、子ども部屋、書斎など、公開しない部屋を明示する。
- 所在地の特定:番地、最寄り駅、周辺の建物、玄関前の表札や郵便受け、車のナンバーなど、住所を特定できる情報を映さない、書かない。
- 家族の映り込み:家族、特に子どもの顔や氏名を、投稿や見学会で映す・伝える範囲。見学会の参加者が撮影することへの対応。
- 見学会の運営:立会いの有無、貴重品の保管、見学者の氏名の把握、事故があったときの責任。見学者が施主宅で受けた損害の賠償をどうするか。
- 個人情報:施主から会社が取得する情報(氏名、住所、家族構成、写真)の利用目的を、広告への使用も含めて、契約書に書く。
- 削除の請求:引渡し後に事情が変わったときに、施主が投稿の削除を求められること、会社が公開している資料から施主宅の情報を外す期限。
引渡し後や、家を売却・賃貸する場合の扱いも、書いておく項目です。協力の期間中に、施主が家を売却したり、賃貸したりすると、見学会ができなくなります。その場合に、値引き相当額を返還するのか、協力の期間を短縮して終わらせるのかを決めておきます。買主や借主に、見学会や動画の存在を引き継ぐことはできません。協力の義務を相続人や譲受人に承継させる定めは、実際には効力を持たせにくいため、置かないほうが現実的です。
起きがちなこと:値引きの約束が、請負契約の外で動き出す
よくあるご質問
モニターハウスの確認書は、請負契約書とは別に作るべきですか。
別の書面にすることが多いのですが、請負契約本体との関係(付属か別契約か、どちらを優先するか、値引きの位置づけ)を確認書の最初に書くことが大切です。値引きによって請負代金の額が変わるときは、建設業法19条2項の変更の書面にもなるように、署名欄と日付を整えます。
値引きと引換えに投稿してもらう場合、広告の表示は必要ですか。
消費者庁の運用基準では、事業者が第三者に自らの商品や役務の表示をさせ、客観的な状況から第三者の自主的な意思による内容と認められなければ、事業者の表示とされます。対価には金銭や物品のほか、対価性のある経済上の利益が含まれます。値引きと引換えの投稿は、この場合に当たる可能性があるため、広告であることが明瞭に分かる表示を、確認書で定めておくのが安全です。
ステルスマーケティングで責任を問われるのは、施主ですか、住宅会社ですか。
消費者庁の資料では、景品表示法で規制されるのは商品や役務を供給する事業者で、依頼を受けた第三者は規制の対象にならないと説明されています。景品表示法7条は、5条の規定に違反する行為があるときに、内閣総理大臣が事業者に措置命令をすることができると定めています。確認書は、表示の責任が会社にあることを前提に作ります。
協力ができなくなったとき、値引き相当額を全額返す必要がありますか。
確認書の定め次第です。全額返還の定めは、消費者である施主との関係では、消費者契約法10条の問題が生じやすくなり、解除に伴う返還と評価されるときは9条1項1号(平均的な損害の額を超える部分は無効)の問題にもなります。協力の項目ごとに値引きの配分額を決め、未履行の部分に応じて返還する形にしておくと、算定の根拠が示しやすくなります。
見学会や動画で、施主の住所が分からないようにするには、どうすればよいですか。
確認書に、住所を特定できる情報を映さない、書かないことを定めます。番地、表札、郵便受け、車のナンバー、周辺の目立つ建物などが典型です。公開する部屋と公開しない部屋、家族の映り込み、削除の請求の方法も、あわせて書いておきます。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の契約への当てはめは、工事の内容や取引の実態によって結論が変わることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索