このページの要点
- 構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分は、引渡しから10年間の責任。注文者に不利な特約は無効(品確法94条)。
- 許可を受けた建設業者は、保険への加入または供託を行い、契約を締結するまでに供託所などを書面で説明する(履行法3条・10条)。
- 完成保証や前払金の保全は、一般的な義務を定めた規定が取り上げた法律には見当たらない。契約で用意する仕組みの内容を書面に書く。
- 確認済証の交付後でなければ着工できない(建築基準法6条8項)。検査済証と契約上の検査は別の手続として整理する。
結論:新築住宅の請負契約には、民法の枠とは別に、品確法の10年の責任と履行法の資力確保が重なる
住宅を新築する工事の請負契約は、一般の工事の請負契約と比べると、法律が契約の中身に踏み込む場面が多くあります。住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下「品確法」)94条1項は、住宅を新築する建設工事の請負契約において、請負人は、注文者に引き渡した時から10年間、住宅のうち構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるものの瑕疵について、民法の定める担保の責任を負うと定めています。同条2項は、この規定に反する特約で注文者に不利なものは無効としています。
さらに、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(以下「履行法」)は、この10年の責任が、請負人の倒産などで実際には果たされなくなることを防ぐために、建設業者に、保険への加入または保証金の供託を求めています(履行法3条)。契約書を作る側は、この二つの法律を前提に、契約書の瑕疵担保責任の条項、資力確保の方法、注文者への説明を、組み立てることになります。
このページは、条文に基づく一般的な解説です。個別の住宅について、品確法や履行法の規定がどう当てはまるかは、工事の内容、建設業者かどうか、契約の相手方が誰かによって結論が変わります。ここでは、条文で確認できる範囲に絞って、新築住宅の請負契約書で押さえる点を整理します。改修やリフォームの工事は、新築と法の枠組みが違うので、最後の節で違いを整理します。
- 構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分は、引渡しから10年間の責任。注文者に不利な特約は無効(品確法94条)。内装や設備など、それ以外の部分は民法の枠で考える。
- 許可を受けた建設業者は、新築住宅について保険への加入または供託を行い、供託の場合は契約を締結するまでに供託所などを書面で説明する(履行法3条・10条)。
- 完成保証や前払金の保全は、履行法のように請負人へ一般的に義務づける規定が、このページで取り上げた法律には見当たらない。契約で用意する仕組みとして、内容を契約書に書く。
- 確認済証が交付される前には着工できず(建築基準法6条)、完了検査と検査済証が引渡しや使用の前提になる場面がある。工期と引渡しの条項にこの手続を織り込む。
10年の責任の範囲:構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分
品確法の10年の責任が及ぶのは、「新築住宅」と「住宅を新築する建設工事の請負契約」です。「新築住宅」とは、新たに建設された住宅で、まだ人の居住の用に供したことのないもの(建設工事の完了の日から起算して1年を経過したものを除く)をいいます(品確法2条2項)。また、「瑕疵」とは、種類または品質に関して契約の内容に適合しない状態をいいます(同条5項)。民法の「契約不適合」とほぼ同じ意味合いで定義されています。
10年の責任の対象になる部分は、品確法施行令5条で定められています。構造耐力上主要な部分は、住宅の基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材、床版、屋根版、横架材で、自重、積載荷重、積雪、風圧、土圧、水圧、地震その他の震動や衝撃を支えるものです(1項)。雨水の浸入を防止する部分は、住宅の屋根もしくは外壁、またはこれらの開口部に設ける戸、わくその他の建具と、雨水を排除するために住宅に設ける排水管のうち、屋根もしくは外壁の内部または屋内にある部分です(2項)。
新築住宅の部位と、責任の期間の考え方
| 部位 | 責任の枠組み | 期間の考え方 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 基礎、柱、壁、床版、屋根版、横架材など(構造耐力上主要な部分) | 品確法の特例 | 引渡しから10年間。構造耐力に影響のない瑕疵は除く。注文者に不利な特約は無効 | 品確法94条1項・2項、同法施行令5条1項 |
| 屋根、外壁、開口部の建具、屋根・外壁内や屋内の排水管(雨水の浸入を防止する部分) | 品確法の特例 | 引渡しから10年間。雨水の浸入に影響のない瑕疵は除く | 品確法94条1項、同法施行令5条2項 |
| 内装仕上げ、設備機器、上記以外の部分 | 民法の枠 | 注文者が不適合を知った時から1年以内の通知が必要(悪意・重過失の請負人を除く)。契約で定めがあればその内容も踏まえる | 民法637条 |
表の「民法の枠」の欄は、品確法の特例の対象外の部分についての一般的な整理です。消費者が注文者の場合などは、消費者契約法による制約も別に考える必要があります。
10年の責任の中身は、民法の定める担保の責任です。品確法94条1項は、民法415条(債務不履行による損害賠償)、541条・542条(催告解除・無催告解除)、559条において準用する562条・563条(履行の追完の請求・代金の減額の請求)に規定する担保の責任を負うと書いています。つまり、修補などの追完、代金の減額、損害賠償、解除という、民法が定める救済手段がすべて、10年の期間にわたって及びます。契約書の条項で、10年の期間のうち、「修補のみ」に責任を限定することは、注文者に不利な特約として、無効になる可能性があります。
民法の枠との関係で、条文に注意すべき点があります。品確法94条3項は、1項の場合における民法637条の適用について、読み替えを定めています。読み替え後の637条は、請負人が品確法94条1項に規定する瑕疵がある目的物を注文者に引き渡した場合に、注文者がその瑕疵を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求、契約の解除ができない、という形になります。この規定は、請負人が引渡しの時に瑕疵を知り、または重大な過失によって知らなかったときは適用されません(637条2項)。10年という期間と、知った時から1年以内の通知という二つの要素が、条文上は同時に存在する点を、契約書の条項を書くときに意識しておく必要があります。
期間は、契約で伸ばすこともできます。品確法97条は、住宅新築請負契約において、請負人が94条1項に規定する瑕疵について担保の責任を負うべき期間は、注文者に引き渡した時から20年以内とすることができると定めています。10年を超える期間を契約で定めるときは、その旨を条項に明記します。なお、中央建設業審議会は、建設工事の標準請負契約約款を作成し、その実施を勧告することができるとされています(建設業法34条2項)。契約書のもとにする約款を選ぶときは、住宅の新築を想定した約款かどうか、10年の責任と資力確保の条項が法律に沿っているかを確認します。それ以外の部分の期間設計は契約不適合責任の期間設計の考え方と合わせて点検します。
契約書の条項:短縮できない範囲を前提に、通知と対応の手順を書く
10年の責任の期間を短くする条項は、注文者に不利な特約として無効になります。他方で、責任の範囲の中で、手順を整える条項は、契約書に置いておく意味があります。たとえば、瑕疵を発見したときの通知の方法、請負人が調査するための立入りの機会、補修の方法と時期、損害賠償の範囲などです。次の条文例は、品確法の規定に沿った枠組みの例です。実際の契約書では、約款の他の条項との整合を取る必要があります。
条文例
第○条(構造耐力上主要な部分等の担保責任)
- 乙は、甲に本件住宅を引き渡した日から10年間、本件住宅のうち、構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として住宅の品質確保の促進等に関する法律施行令第5条に定めるものの瑕疵(構造耐力又は雨水の浸入に影響のないものを除く。)について、同法第94条第1項に規定する担保の責任を負う。
- 前項の規定に反する特約で甲に不利なものは、無効とする。
- 甲は、第1項の瑕疵を発見したときは、速やかに、その内容を書面等により乙に通知する。乙は、通知を受けたときは、現地を確認し、補修の方法と時期を甲に書面等で示す。
- 前三項のほか、本件住宅のうち第1項に定める部分以外の部分の不適合については、第○条(契約不適合責任)の定めによる。
1項は法律の条文に沿った書き方です。2項は法律上当然に生じる効果の確認で、置かなくても無効の効力は変わりません。3項の通知と対応の手順は、期間を短くするものではなく、手順を整えるためのものです。
条文例の4項のように、10年の責任の対象部分と、それ以外の部分を、契約書の中で分けて書くと、後で責任の範囲を巡って争いになったときに、どの条項が適用されるのかが明らかになります。それ以外の部分の不適合責任の期間設計は、契約不適合責任の期間・救済・自然素材で取り上げた考え方が、新築住宅でもそのまま使えます。
設計住宅性能評価書を契約に取り込むときの規定も、確認しておきます。品確法6条1項は、住宅の建設工事の請負人が、設計された住宅に係る住宅性能評価書もしくはその写しを請負契約書に添付し、または注文者に交付した場合には、その評価書に表示された性能を有する住宅の建設工事を行うことを契約したものとみなすと定めています。ただし、請負契約書において反対の意思を表示しているときは、この限りではありません(同条4項)。評価書を契約書に添付する場合は、評価書に表示された性能が、そのまま契約の内容になることを、請負人側も確認しておく必要があります。
また、建設住宅性能評価書が交付された住宅(評価住宅)の建設工事の請負契約に関する紛争については、指定住宅紛争処理機関が、当事者の双方または一方からの申請により、あっせん、調停および仲裁の業務を行うことになっています(品確法67条1項)。評価書を利用する契約では、紛争の解決方法の条項(建設業法19条1項15号)を書くときに、この制度の存在を踏まえて、全体を整理します。
履行法:保険への加入または供託、契約前の説明
10年の責任は、請負人に支払の能力があって初めて、実際に果たされます。請負人が倒産してしまえば、注文者は、責任の履行を受けられなくなるおそれがあります。この問題に対応するのが履行法です。履行法3条1項は、建設業者に、毎年、基準日(3月31日)から3週間を経過する日までの間において、基準日前10年間に住宅を新築する建設工事の請負契約に基づき発注者に引き渡した新築住宅について、特定住宅瑕疵担保責任の履行を確保するため、住宅建設瑕疵担保保証金の供託をしていなければならないと定めています。
ただし、住宅瑕疵担保責任保険法人と住宅建設瑕疵担保責任保険契約を締結し、発注者に保険証券またはこれに代わる書面を交付した場合などは、その保険契約に係る新築住宅は、供託すべき額の算定の対象から除かれます(履行法3条2項)。つまり、建設業者には、保険に加入する方法と、保証金を供託する方法があり、その組み合わせで資力確保を行います。
資力確保の二つの方法と、契約書で決める点
| 項目 | 保険契約の方法 | 保証金の供託の方法 |
|---|---|---|
| 仕組み | 住宅瑕疵担保責任保険法人と、住宅建設瑕疵担保責任保険契約を締結する。保険料は建設業者が支払う | 基準日ごとに、基準額以上の額を供託所に供託する(履行法3条1項・2項) |
| 保険・供託の要件 | 保険金額は2,000万円以上、引渡しから10年以上有効、国土交通大臣の承認なく変更・解除できない、などの要件がある(履行法2条6項) | 基準額は、基準日における対象の新築住宅の合計戸数などを基礎に、政令の定めで算定する(履行法3条2項) |
| 注文者への交付・説明 | 発注者に保険証券またはこれに代わる書面(電磁的記録の提供を含む)を交付する(履行法3条2項) | 請負契約を締結するまでに、供託所の所在地などを記載した書面を交付して説明する(履行法10条1項) |
| 契約書に書く点 | どの保険法人の保険か、保険証券の交付時期、保険の対象となる範囲 | 供託所の所在地など、説明の書面を交付した旨 |
契約書にどこまで書くかは約款に左右されます。表は条文から読み取れる要素の整理で、具体的な書式を示すものではありません。
履行法の義務の相手方は、「建設業者」と定義されています。履行法2条3項は、建設業者を、建設業法2条3項に規定する建設業者と定めています。建設業法2条3項は、建設業者を「第3条第1項の許可を受けて建設業を営む者」と定義しています。したがって、履行法の保険加入・供託の義務は、許可を受けた建設業者が対象です。許可を受けていない請負人については、品確法94条の10年の責任(請負人一般に及ぶ規定)が及ぶ一方で、履行法の資力確保の義務の対象かどうかは、条文の定義に照らして個別に確認する必要があります。
契約を締結する段階で、供託建設業者には、さらに説明の義務があります。履行法10条1項は、供託建設業者は、住宅を新築する建設工事の発注者に対し、請負契約を締結するまでに、その保証金の供託をしている供託所の所在地その他保証金に関し国土交通省令で定める事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければならないと定めています。この説明は契約の締結の前に必要なので、契約書の署名の場で初めて説明する、という運用では間に合いません。契約書の前文または末尾に、説明の書面を交付した旨と交付日を書く欄を設けておくと、説明が済んでいることを確認できます。
資力確保の措置をとっていない場合の影響も、条文で確認できます。履行法5条は、新築住宅を引き渡した建設業者は、供託をし、かつ届出をしなければ、基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後においては、新たに住宅を新築する建設工事の請負契約を締結してはならないと定めています。契約を受ける側にとって、保険と供託の手当ては、受注の前提条件になっている、ということです。
建設業者の帳簿にも関連があります。建設業法施行規則26条1項3号は、発注者と締結した住宅を新築する建設工事の請負契約に関する帳簿の記載事項として、住宅の床面積、そして保険契約を締結して保険証券を交付しているときは、その住宅瑕疵担保責任保険法人の名称を挙げています。さらに、帳簿の保存期間は、住宅を新築する建設工事に係るものは、引渡しから10年間とされています(同規則28条1項)。10年の責任と、10年の帳簿の保存は、期間が揃えられています。
完成保証と前払金の保全:法律の義務ではなく、契約で用意する仕組み
10年の責任と履行法の資力確保は、引渡しの後の問題に対する仕組みです。引渡しの前、つまり工事の途中で請負人が倒産したり、工事を続けられなくなったりした場合の対応は、別の問題です。この点について、履行法のように、新築住宅の請負人に一般的な保全措置を義務づけた条文は、このページで取り上げた品確法・履行法・建設業法には見当たりません。完成保証や前払金の保全の仕組みは、契約や、利用する制度の約款で定められるものなので、内容は、利用する制度の資料で確認する必要があります。
民法633条は、報酬は仕事の目的物の引渡しと同時に支払わなければならないと定めており、請負は原則として後払いです。しかし、住宅の新築は工事の期間が長く、請負人の資金の負担も大きいので、実際には、契約時、着工時、上棟時、完成時などに、請負代金を分割して支払う定めが広く置かれています。建設業法19条1項5号は、請負代金の全部または一部の前金払または出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期および方法を契約書に書くことを求めています。分割払いの契約では、各回の支払が、実際の工事の進み具合に見合っているかが問題になります。
住宅の新築の代金の分割払いと、保全の考え方(例)
- 契約時契約時の支払。請負人が倒産した場合の返還の保全が、論点になる。
- 着工時着工の支払。確認済証の交付後でなければ着工できない点との整合を取る。
- 中間時上棟など、工事の進み具合に応じた支払。出来高との見合いを確認する。
- 完成・引渡し時検査を経て、引渡しと同時に残代金を支払う。検査済証との関係を整理する。
分割払いの代金が、工事の出来高よりも先行して支払われていると、請負人が途中で倒産した場合に、注文者の支払済みの代金のうち、まだ工事が行われていない部分の回収が難しくなります。この危険を和らげる仕組みとして、完成保証人を立てる方法、保証会社の完成保証を利用する方法、支払った前払金の返還を保証する方法などが、一般にあります。どの仕組みを使うかは、請負人側が用意するもので、それぞれ保証の範囲や条件が異なります。契約書には、「完成保証の内容を別紙に記載すること」「保証書を交付する時期」を書いておくと、注文者に対する説明になります。
建設業法19条1項13号は、工事の目的物が契約の内容に適合しない場合における不適合を担保すべき責任または当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容を書面に記載することを求めています。履行法に基づく保険や供託の内容も、この号の「措置」として、契約書に書く対象になります。代金の支払条件の設計は代金の支払設計に整理しており、請負人側の事情で工事が中断したときの解除と出来高の精算は解除・出来高精算で見ています。
設計と施工の分担、確認申請・中間検査・完了検査と工期
新築住宅の請負契約書では、建築基準法の手続と、工事の進行が結びついている点を、条項に織り込む必要があります。建築基準法6条1項は、建築主は、一定の建築物を建築しようとする場合には、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事等の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならないと定めています。そして同条8項は、確認済証の交付を受けた後でなければ、当該建築物の建築の工事は、することができないと定めています。
ここでの「建築主」は、工事の請負契約の注文者です。確認の申請の手続を、請負人や設計者が代わりに行うことは多いのですが、法律上の申請者は建築主です。契約書では、申請の手続を誰が行うか、その費用は誰が負担するか、確認済証が交付される前には着工しない、という点を書いておきます。確認の審査には、法律上の期間があります。建築主事等は、申請書を受理した日から、6条1項1号・2号に係るものは35日以内に審査して確認済証を交付しなければならず(6条4項)、一定の場合には、35日の範囲内で期間が延長されることもあります(6条6項)。着工の時期は、この審査期間と、補正や構造計算適合性判定の有無に左右されるので、契約書の着工日を固定しすぎると、後で工期の変更が必要になります。
新築の工事に関係する建築基準法の手続と、契約書で決める点
| 手続 | 条文 | 条文の内容 | 契約書で決める点 |
|---|---|---|---|
| 確認と確認済証 | 建築基準法6条1項・8項 | 工事に着手する前に確認を受ける。確認済証の交付後でなければ工事をすることができない | 申請を行う者、費用の負担、確認済証の交付前に着工しない旨、変更が生じたときの再申請の費用と工期 |
| 中間検査 | 同法7条の3 | 特定工程を含む工事は、特定工程を終えたときに検査を申請する。中間検査合格証の交付前は、特定工程後の工程を施工してはならない | 対象となる工程の確認、合格証の交付が工事の進行の条件であること |
| 完了検査 | 同法7条 | 工事を完了したときは、完了した日から4日以内に建築主事等に到達するように、検査を申請する | 申請を行う者、検査の日程の調整、検査済証の交付を引渡しの条件とするか |
| 検査済証の前の使用制限 | 同法7条の6 | 一定の建築物の新築では、検査済証の交付を受けた後でなければ使用できない(仮使用の例外あり) | 引渡し前に入居や使用を始めないこと、仮使用を認める場合の扱い |
表の手続の対象になる建築物の範囲は、規模や地域によって異なります。上の表は一般的な整理で、個別の工事への当てはめは、建築基準法の条文と所管の確認が必要です。
完了検査と引渡しの関係は、契約書の検査・引渡し条項で整理します。建築基準法の完了検査と検査済証の交付は、行政の手続で、注文者と請負人の間の契約上の「検査」(注文者が工事の完成を確認するための検査、建設業法19条1項11号)とは、別の手続です。両者を混同して、「検査済証が交付されたから、契約上の検査も合格」と読めるような書き方にすると、契約上の検査の意味が曖昧になります。検査と引渡しの条項の組み立ては検査・引渡し条項を、設計図書の特定と変更の扱いは工事内容の特定と追加・変更工事の書面を参照してください。
設計と施工の分担も、契約書に書く必要があります。設計を設計者に別に依頼し、その設計図書に基づいて施工だけを請け負う場合、設計図書の誤りや、設計の変更に伴う責任は、誰が負うのかを整理します。設計と施工を一括で請け負う場合は、設計に関する責任も請負人が負う形になるので、設計図書の内容が、契約の内容として特定されていることが重要です。工事監理を誰が行うかも、契約書で明確にしておきます。
リフォーム瑕疵保険との違い:新築と改修で法の枠が違う
新築住宅と、既存の住宅の改修・リフォームでは、適用される法の枠が違います。品確法94条1項の10年の責任は、「住宅を新築する建設工事の請負契約」に適用されるもので、既存の住宅の改修工事の請負契約は、同条の対象ではありません。増築や大規模な改修が、「住宅を新築する」工事に当たるかどうかは、個別の当てはめの問題で、条文の文言と工事の内容に照らして確認する必要があります。
履行法の資力確保の義務も、新築住宅を対象としています。履行法3条1項の対象は、「住宅を新築する建設工事の請負契約に基づき発注者に引き渡した新築住宅」です。リフォーム工事を請け負う事業者に、履行法に基づく保険加入または供託の義務が一般的にあるわけではありません。リフォーム工事向けの保険は、新築の資力確保とは別の、任意の制度として用意されていると見られます。その内容(対象となる工事、保険の範囲、期間など)は、保険を提供する法人の資料で確認する必要があります。
新築住宅とリフォームの、法の枠の違い
| 項目 | 新築住宅の請負 | リフォーム・改修の請負 |
|---|---|---|
| 10年の特例 | 品確法94条1項で、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分は10年 | この特例の対象ではない。民法の枠で考える |
| 不適合責任の通知期間 | 民法637条の読み替え(94条3項)と10年の責任 | 民法637条1項:知った時から1年以内の通知(悪意・重過失の請負人を除く) |
| 資力確保 | 許可を受けた建設業者に、保険加入または供託が求められる(履行法3条) | 履行法の義務の対象ではない。任意の保険の制度がある場合は、その資料で確認する |
| 契約前の説明 | 供託建設業者に、供託所などの書面による説明義務(履行法10条) | リフォーム固有の説明義務は、訪問販売などの場合の書面交付のルールが中心(リフォームのクーリング・オフ) |
改修工事の契約書で、新築の用語である「構造耐力上主要な部分」を借りて、責任の期間を区別することがあります。しかし、この言葉の定義は、品確法施行令5条が新築住宅の請負契約を前提に定めたものです。リフォームの契約書でこの言葉を使うときは、範囲を契約書の中で特定しておかないと、期間の対象を巡って争いになることがあります。新築の契約書から条項を流用してリフォームの契約書を作る場合も、逆の場合も、法の枠の違いを意識して、条項を点検します。
起きがちなこと:新築の契約書で、法の枠を前提にしない条項が混ざる
ヒヤリング点検表 新築住宅の請負契約書を点検する問い
- 契約書の瑕疵担保(契約不適合)の条項は、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分について、引渡しから10年を下回っていないか。10年を下回る特約は、注文者に不利なものとして無効になる(品確法94条2項)。
- 責任の中身を、修補だけに限定していないか。94条1項は、追完、代金の減額、損害賠償、解除の担保の責任を負うとしている。
- 保険に加入するのか、供託をするのか。契約書とその説明に書いてあるか。建設業者は、いずれかの方法で資力を確保する(履行法3条)。
- 供託をしている場合に、契約を締結するまでに、供託所の所在地などを記載した書面を交付して説明したか。履行法10条1項。契約書の署名の場での初めての説明では間に合わない。
- 完成保証や前払金の保全は、契約書にどう書いてあるか。このページで取り上げた法律には一般的な義務の規定が見当たらない。契約で用意する仕組みの内容を書く。
- 確認済証の交付前には着工しない旨が書かれているか。検査済証の扱いは。建築基準法6条8項。検査済証と契約上の検査を混同しない。
- 住宅性能評価書を添付する場合、その性能が契約内容になることを理解しているか。品確法6条1項。反対の意思は契約書で表示する必要がある。
新築住宅の請負契約書は、法律が土台を決めている部分が多いので、法に反する条項を置かないこと、法が求める説明と書面を契約の前に済ませることが、基本です。そのうえで、法が決めていない部分(完成保証、前払金の保全、手続の分担、検査と引渡し)を、契約書で具体的に定めます。法の土台が見えにくいときは、10年の責任と資力確保という二つの柱から、契約書を点検すると、抜けや矛盾を見つけやすくなります。許可を取る前後の契約書と書類の整え方は建設業許可の申請で使う書類、建設業法19条の記載事項の全体は19条の記載事項もあわせて参照してください。
よくあるご質問
新築住宅の請負契約で、契約不適合責任の期間を1年に短縮できますか。
住宅のうち構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分の瑕疵については、できません。品確法94条1項は、引渡しから10年間の担保の責任を定め、同条2項は、これに反する特約で注文者に不利なものを無効としています。内装や設備など、それ以外の部分は、民法の枠で期間を考えます。
品確法の10年の責任は、リフォーム工事にも適用されますか。
適用されません。品確法94条1項は「住宅を新築する建設工事の請負契約」について定めており、既存の住宅の改修工事の請負契約は、同条の対象ではありません。増築や大規模な改修が「住宅を新築する」工事に当たるかどうかは、工事の内容と条文の文言に照らして個別に確認する必要があります。
履行法の保険と供託は、どの事業者に義務がありますか。
履行法3条1項は、建設業者に、基準日ごとの保証金の供託を求めています。履行法2条3項は建設業者を建設業法2条3項に規定する建設業者と定義し、同項は、建設業法3条1項の許可を受けて建設業を営む者としているので、許可を受けた建設業者が対象です。保険に加入し、発注者に保険証券を交付した場合は、その分が供託すべき額の算定から除かれます(履行法3条2項)。
契約前に注文者へ説明しなければならないことはありますか。
供託建設業者は、住宅を新築する建設工事の発注者に、請負契約を締結するまでに、供託所の所在地その他の事項を記載した書面を交付して説明しなければなりません(履行法10条1項)。発注者の承諾を得て、書面の交付に代えて電磁的方法で提供することもできます(同条2項)。
建築確認の前に着工してもよいですか。
できません。建築基準法6条8項は、確認済証の交付を受けた後でなければ、確認の対象となる建築物の建築の工事は、することができないと定めています。確認が必要な建築物の範囲は同条1項で定められており、規模や地域によって異なります。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の契約への当てはめは、工事の内容や取引の実態によって結論が変わることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索