このページの要点
- A・B・C工事は法律上の定義のない慣行上の区分で、ビルごとに異なる。受ける工事の区分と、B工事との取合いを契約書と図面で明記する。
- 借主が建物に手を加えるには貸主の承諾が通常必要。承諾の範囲と、請負契約の工事の範囲を一致させる(民法616条・594条1項)。
- 夜間・休日の作業などの制約は、19条1項4号に当たる定めとして書き、工期と割増費用の負担を決める。
- 退去時の原状回復の条件は、内装の仕様に影響する。下請に出す場合は、書面と支払期日(建設業法24条の3)も確認する。
結論:テナント内装の請負契約は、注文者と請負人の二者だけの契約ではない
ビルのテナントが、借りている区画の内装を工事するとき、請負契約の当事者は、注文者であるテナントと、請負人である内装工事の事業者です。しかし、工事を行う場所は他人(貸主)が所有する建物の一部で、その建物には、貸主、管理会社、同じ建物の他のテナントが関わっています。そのため、請負契約書の中に、二者の間だけでは決められない事項が、いくつも出てきます。誰が工事を発注し、費用を負担するのか。誰が施工業者を指定するのか。貸主の承諾は取れているか。ビルの管理規則で、工事の時間帯や搬入の方法に制約はあるか。退去するときには、工事した内装をどうするのか。
このページは、条文と一般的な実務の考え方に基づく解説です。テナントビルの工事区分や館内の規則は、ビルごとの賃貸借契約や、貸主・管理会社が定める工事の規程によって異なります。そのため、ここで示す区分や運用は一般的な傾向であり、個別のビルでは、そのビルの賃貸借契約と工事の規程を確認する必要があります。「A工事・B工事・C工事」という区分も、法律に定義のある用語ではなく、条文で意味を確認できるものではありません。
- 工事区分(A工事・B工事・C工事)は、発注者、費用の負担者、施工業者の指定、完成後の所有の整理をまとめて決める慣行で、ビルごとに内容が違う。請負契約書は、受ける工事がどの区分かを明記する。
- 借主が建物に手を加えるには、貸主の承諾が通常必要になる。承諾の範囲と、請負契約の工事の範囲が一致しているかを確かめる。
- 館内規則、夜間・休日の作業、搬入経路は工期と費用に直結する。建設業法19条1項4号は、工事を施工しない日または時間帯の定めをするときは、その内容を書くことを求めている。
- 退去のときの原状回復と、内装工事の仕様が結びつく。賃貸借契約の原状回復の条項を確認したうえで、工事の範囲と撤去の対象を決める。
工事を発注者と請負人の二者の問題として見たときの契約書の組み立ては、工事内容の特定と既存部分のリスクや追加・変更工事の書面で取り上げています。第三者損害や貸主の承諾の基本は近隣・第三者損害・石綿・廃棄物にあります。このページは、テナント内装という場面に固有の、工事の区分と施工側の契約に絞ります。
A工事・B工事・C工事の区分:誰が発注し、誰が費用を負担し、誰が施工するか
オフィスビルや商業ビルの賃貸借では、テナントが入居時に行う内装工事を、A工事、B工事、C工事に分ける慣行があります。ビルの賃貸借契約や工事の規程に明記されていることが多く、区分によって、発注者、費用の負担者、施工業者が決まります。一般的な理解は、次の表のとおりです。ただし、各区分の中身は、ビルによって異なります。
工事区分の一般的な整理(ビルごとに異なる)
| 区分 | 一般的な内容 | 発注者・費用の負担 | 施工業者 |
|---|---|---|---|
| A工事 | 建物の基本的な部分や、共用部、基本設備に関する工事 | 貸主が発注し、費用も貸主が負担するのが一般的 | 貸主が指定する業者 |
| B工事 | テナントの区画内の工事のうち、防災、空調、給排水、電気の幹線など、建物全体の安全や設備に関わるもの | テナントが費用を負担するが、貸主が発注する形と、テナントが発注する形の両方がある | 貸主が指定する業者 |
| C工事 | テナントの区画内の内装仕上げ、什器、看板、専用の設備など | テナントが発注し、費用もテナントが負担する | テナントが選ぶ業者(貸主の承認が必要な場合がある) |
区分の呼び方や範囲はビルによって異なります。B工事の発注の仕方や、C工事の施工業者に承認が必要かどうかも、そのビルの賃貸借契約と工事の規程で決まります。
内装工事の請負人は、通常、C工事を受けます。そのとき、請負契約書の工事の範囲が、C工事の範囲に収まっているか、B工事の範囲と取り合う部分(境界)はどこか、を契約書と図面で明らかにしておく必要があります。たとえば、天井の内側の空調ダクトや配管、スプリンクラーなどの防災設備は、B工事の対象とされることが多い部分です。内装の天井仕上げ工事を請け負う場合、天井の中の設備の工事は別の業者が行い、請負人の工事は、設備の工事が終わった後に天井を仕上げる、という順序になります。この順序は、工期と工程に直結します。
テナント内装工事の発注関係(一般的な例)
- 貸主(ビルの所有者)A工事を発注。B工事の施工業者を指定。館内規則と工事の規程を定める。賃貸借契約に基づく承諾の権限を持つ。
- テナント(借主・注文者)C工事の発注者。B工事の費用を負担する。貸主との間で、工事の承諾と、退去時の原状回復の約束を持つ。
- 内装工事の請負人テナントから内装(C工事)を請け負う。B工事の業者との取合い、館内規則、貸主の承諾の範囲に従って施工する。
- 下地・塗装などの下請請負人から、内装の一部(下地、ボード、塗装など)を請け負う。元請との間で、請負契約の書面と代金の支払の期日が決まる。
工事区分によっては、貸主指定の別業者(B工事)が、同じ区画で並行して作業することがあります。
契約書に書く内容として、次の点が実務上重要です。受ける工事の区分と範囲を、本文または別紙で明記すること。B工事・A工事の施工者との取合い(工程・施工範囲の境界)を、図面で特定すること。他業者(貸主指定の業者)の工事の遅れが、請負人の工期に影響する場合の、工期の延長と費用の扱いを決めること。これらは、建設業法19条1項1号(工事内容)、3号(工事着手と完成の時期)、6号(設計変更・工事の中止などによる工期や請負代金の変更、損害の負担)に対応する事項です。19条の16項目の全体像は建設業法19条の記載事項で点検できます。
内装の所有の整理にも触れておきます。民法242条は、不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得すると定めています。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げません。内装工事で、壁、天井、床などを建物に取り付けたとき、それが建物に付合したと評価される場合、その部分は貸主の所有に帰属する可能性があります。付合したと評価されるかどうかは、取付けの態様で変わり、条文だけでは決まりません。請負人にとって重要な点は、請負代金の回収を、「施工した内装を引き揚げる」ことに頼れない場合がある、ということです。代金の支払の条件や、連帯保証などの担保を、契約書で手当てする必要があります。支払の設計は代金の支払設計を参照してください。
貸主の承諾:承諾の範囲と、請負契約の工事の範囲を一致させる
借主が賃借物に手を加える内装工事は、貸主の承諾が通常必要になります。民法616条は、賃貸借に、民法594条1項(借主による使用および収益)を準用しています。594条1項は、借主は、契約またはその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用および収益をしなければならないと定めています。賃貸借契約には、内装の工事や造作の取付けに、貸主の事前の承諾を要する旨の条項が置かれることが多く、その条項が根拠になります。
請負人から見ると、貸主の承諾が取れているかどうかは、着工の前提条件です。承諾のないまま着工すれば、貸主から工事の中止や、元の状態に戻すことを求められるおそれがあります。このとき、工事が途中で止まり、出来高の精算が争いになります。基本的な条項(承諾書の写しの交付、承諾が得られないときの中止と費用の扱い)は近隣・第三者損害・石綿・廃棄物にあるので、ここでは、テナント内装に特有の、承諾の中身の確認を整理します。
ヒヤリング点検表 貸主の承諾の中身を確かめる問い
- 貸主の承諾は、誰が、誰に対して出したものか。承諾書の宛先がテナントで、請負人が承諾の範囲を直接確認できないことが多い。写しを受け取る。
- 承諾の対象は、どの図面・どの工事の範囲か。請負契約の図面と承諾の対象の図面が違えば、承諾の範囲外の工事を施工することになりかねない。
- 承諾に条件(時間帯、指定業者の使用、保険加入、原状回復の約束)は付いているか。条件を請負契約にも反映しないと、請負人が条件に違反したことになる。
- 追加・変更工事が出たとき、貸主の承諾は取り直すのか。変更の工事が承諾の範囲を超えると、着工できなくなる。
- B工事とされる部分は、承諾の対象にどう記載されているか。請負契約から外れる工事が、承諾の対象に含まれていないか確認する。
条文例
第○条(貸主の承諾内容との一致)
- 甲は、本工事について貸主の承諾を得たときは、承諾を証する書面の写し及び承諾の対象となった図面を乙に交付する。
- 乙は、前項の承諾の内容に従って本工事を施工する。承諾の内容に条件が付されているときは、甲は、その条件を乙に書面で通知する。
- 甲が追加又は変更の工事を乙に求める場合において、その工事が第1項の承諾の範囲を超えるおそれがあるときは、甲は、あらかじめ貸主の承諾を得る。乙は、承諾を得るまで、当該部分の施工をしないことができる。
- 前項により乙が施工を行わなかったことによる工期の延長及び費用は、乙の責めに帰すべき事由がある場合を除き、甲の負担とする。
貸主の承諾を得る責任を注文者側に置き、請負人が承諾の範囲を超えて施工しない権利を条項にしたものです。実際の条項は、賃貸借契約の内容に合わせて調整します。
追加工事の扱いに、とくに注意が必要です。内装工事は、現場で壁を開けて初めて分かる事情(既存の配管や配線、下地の状態)によって、追加や変更が生じやすい工事です。その追加や変更の工事が、貸主の承諾の範囲を超えている場合、請負人は、承諾なしに施工すべきではありません。この点を契約書に書いておかないと、注文者から「追加は急ぎでやってほしい」と求められたときに、請負人が板挟みになります。追加・変更の書面の取り方は追加・変更工事の書面で、既存部分のリスクの扱いは工事内容の特定と既存部分のリスクで整理しています。
館内規則・夜間工事・搬入経路と、工期・費用
テナントビルでの内装工事には、ビルの管理規則や工事の規程が適用されます。内容はビルごとに異なりますが、一般に、次のような事項が定められていると見られます。事前に規程を入手して内容を確認し、請負契約の工期と費用に反映する必要があります。
- 工事の申請と、施工業者の届出や登録(工事を行う前に、貸主または管理会社への書類の提出が必要な場合がある)
- 作業できる曜日・時間帯(営業時間外や夜間、休日に限る場合がある)
- 騒音・振動を伴う作業の時間帯の制限(他のテナントの営業時間中は行えない場合がある)
- 搬入・搬出の経路、使用できるエレベーター、荷捌きの場所と時間帯
- 共用部の養生の範囲と方法、工事中の入退館の手続(入館者の名簿など)
- 火気を使用する作業の届出、廃材の処分の方法、清掃
- 工事に関する保険の加入証明の提出、工事完了後の貸主・管理会社の立会い検査
作業できる時間帯が夜間や休日に限られる場合、それは工期と費用に直結します。昼間であれば1日で終わる作業が、夜間のみだと、1日あたりの作業時間が短くなって、日数が増えます。割増の人件費や、深夜の作業に伴う費用も生じます。建設業法19条1項4号は、工事を施工しない日または時間帯の定めをするときは、その内容を書面に記載することを求めています。夜間限定、昼間禁止、休日のみといった制約がある場合は、この号に当たる定めとして、契約書に書いておきます。
館内規則の変更や、貸主・管理会社からの追加の要求も、契約書で扱う必要があります。たとえば、契約後に、貸主から、作業時間のさらなる制限や、追加の養生を求められた場合の費用と工期の扱いです。請負人は、契約の時点で入手した規程を前提に工期と代金を見積もっています。そのため、契約後に規程を超える要求が出たときは、追加の費用や工期の延長として、注文者に求められるようにしておきます。次のような条項が考えられます。
条文例
第○条(館内規則及び貸主等の要求)
- 乙は、本工事の施工にあたり、甲が契約の締結前に乙に交付した建物の管理規則及び工事の規程(以下「館内規則」という。)に従う。
- 館内規則に定めのない事項について、貸主又は管理者が追加の要求をしたときは、甲は、その内容を乙に書面等で通知する。乙は、その要求に従うために必要な費用及び工期の延長を、甲に請求することができる。
- 本工事の作業を行う日及び時間帯は、館内規則及び貸主の承諾に基づき、別紙のとおりとする。この日及び時間帯の変更は、甲乙の書面による合意によって行う。
- 甲の要請により、館内規則の許す範囲で休日又は夜間に作業を行うときの割増の費用は、甲の負担とする。
着工前に確かめる順序(一般的な例)
- 規程の入手契約の前に、館内規則と工事の規程を入手し、契約書に添付または引用する。
- 貸主の承諾承諾書の写しと対象図面を受け取る。
- 工事の申請貸主・管理会社へ、工事の申請、施工業者の届出、保険の加入証明を提出する。
- 工程の調整A・B工事の業者と、作業の順序・搬入の日程・エレベーターの使用を調整する。
- 着工・完了館内規則に従って施工し、完了後に貸主・管理会社の立会い検査を受ける。
法令上の手続にも、注意が必要な場合があります。内装の変更に伴い、政令で定める消防用設備等の工事を行うときは、消防法17条の14により、甲種消防設備士が、その工事に着手しようとする日の10日前までに、消防長または消防署長に届け出なければならないとされています。また、建築基準法35条の2は、一定の特殊建築物などについて、壁および天井の室内に面する部分の仕上げを、政令で定める技術的基準に従って、防火上支障がないようにしなければならないと定めています。消防法8条の3は、高層建築物や劇場、旅館などの政令で定める防火対象物で使用する、どん帳、カーテンなどの防炎対象物品に、防炎性能を求めています。これらが自分の工事に当てはまるかどうかは、建物の用途や規模、工事の内容によって異なります。内装材の選定や、設備の変更を伴う工事では、これらの規制の有無を、契約の前に確認しておきます。
テナントが営業している建物での工事では、他のテナントや来館者への影響も契約の問題になります。騒音、振動、粉じん、においで、他のテナントの営業に影響が出ることがありえます。その苦情の受付、日程の調整、説明の責任を誰が負うのか、通常伴う影響と請負人の過失による損害を、どう分けるのか、は近隣・第三者損害・石綿・廃棄物で整理した考え方が使えます。民法716条は、注文者は請負人が第三者に加えた損害を賠償する責任を負わないが、注文または指図について注文者に過失があったときは、この限りでないと定めています。建物の保存の瑕疵による責任は、民法717条が、工作物の占有者(占有者が必要な注意をしたときは所有者)の責任を定めています。工事中の事故の責任の分担は、これらの条文を前提に、契約と保険で整理します。保険の考え方は遅延損害金・責任上限・保険を参照してください。
退去時の原状回復との接続:内装の仕様は、返すときの条件と結びついている
テナントが内装工事を行うとき、退去のときに何をどうするのかは、賃貸借契約で決まっています。民法621条は、賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用および収益によって生じた賃借物の損耗ならびに賃借物の経年変化を除く)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う(賃借人の責めに帰することができない事由によるものを除く)と定めています。しかし、事業用のテナントの賃貸借契約では、この任意規定とは別に、借主が自己の費用で造作や内装を撤去し、入居時の状態(いわゆるスケルトンの状態など)に戻して返す旨の特約が置かれることが多く、その特約の内容によって、退去のときの借主の負担が決まります。
この原状回復の条件は、内装工事の請負契約に影響します。たとえば、退去時に撤去が必要な内装なのか、貸主に引き継ぐ内装なのかによって、工事の仕様(取付けの方法、材料)の選び方が変わります。取り外しやすい工法を選ぶ、撤去しやすい材料を使う、といった判断は、将来の撤去費用に直結します。請負人から見ると、注文者が退去のときの条件を把握しないまま内装を発注し、後で「こんな費用がかかるとは思わなかった」と言われることが、紛争の種になります。
ヒヤリング点検表 内装工事の発注の前に、賃貸借契約で確認する問い
- 退去時は、借主が内装を撤去して返すのか、そのまま引き継ぐのか。撤去が必要なら、将来の撤去費用を見込んだ仕様にする。
- 貸主の費用で設置された設備(A工事・B工事の部分)を、借主が撤去・変更してよいか。借主が変更できない部分に手を入れる工事は、承諾の範囲外になる。
- 借主が設置した内装・造作の買取り・引継ぎの特約はあるか。引継ぎの特約があれば、内装の所有や評価の扱いを契約書にも反映する。
- 原状回復の工事の施工業者は、貸主の指定か、借主が選べるのか。退去時の工事を、同じ請負人に頼めるかどうかに関わる。
契約書には、注文者が退去時の条件を把握していることの確認を入れておくと、後の紛争を減らせます。請負人は、賃貸借契約の内容を直接知る立場ではありませんが、注文者に「退去時の原状回復の条件は確認済みである」という旨の確認をしてもらうことは、できます。工事の図面に、撤去の対象となる内装と、残す内装を区別して書いておくと、将来の原状回復の工事の見積りにも役立ちます。賃貸借契約の側から見た原状回復の論点は、別のガイドで扱っています。
内装下地・塗装などの下請との関係
内装工事は、下地、ボード、塗装、床、電気、設備など、多くの専門工事の組み合わせです。内装の請負人が、これらの一部を下請に出すことは、通常行われています。下請に出すと、請負人は、注文者に対しては請負人(元請)、下請に対しては注文者という、二つの立場に立ちます。このとき、注意すべき規定がいくつかあります。
下請に出すときに確認する条文
| 条文 | 内容 | 契約書・運用で確認する点 |
|---|---|---|
| 建設業法19条 | 建設工事の請負契約の当事者は、契約の締結に際して、工事内容、請負代金などを書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付する。下請契約にも及ぶ | 下請との契約も、書面を交わす。下請の工事内容を、元請の工事の範囲と対応させる |
| 建設業法22条 | 建設業者は、請け負った建設工事を、一括して他人に請け負わせてはならない。例外として、あらかじめ発注者の書面による承諾を得た場合がある(一定の重要な工事を除く) | 工事の全部を下請に丸投げしない。元請が施工の管理に関与する |
| 建設業法24条の3第1項 | 元請負人は、請負代金の出来形部分に対する支払または工事完成後における支払を受けたときは、下請負人に対して、相応する下請代金を、支払を受けた日から1か月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払う | 下請代金の支払の期日を、元請が支払を受けた日から1か月以内に収める |
| 建設業法3条1項2号 | 発注者から直接請け負う一件の建設工事について、下請代金の額が政令で定める金額以上となる下請契約を締結して施工するときは、特定建設業の許可を受けなければならない | 下請に出す金額の規模が、許可の区分に関わる |
テナント内装の特徴として、貸主指定の業者(B工事)の施工や、貸主・管理会社の立会い検査が、工程を左右する点があります。元請の請負人は、自社の下請の工程だけでなく、B工事の業者の工程とも調整しなければなりません。下請の工事が、B工事の遅れによって遅れた場合に、下請に対する工期の延長と費用の扱いをどうするかも、元請と下請の契約書で決めておく必要があります。元請が注文者から工期の延長と費用の増加を受け入れてもらえないと、下請への支払の負担が元請に残ります。
下請との契約について、より詳しくは下請・一人親方との契約で整理しています。工事の途中で中止や解除になったときの出来高の精算は解除・出来高精算を、不可抗力や、貸主の事情による工事の中止は不可抗力・価格変動・工事の中止を参照してください。
起きがちなこと:貸主・管理会社・他の業者の事情が、契約書にない
テナント内装の請負契約書は、二者の約束だけでは完結しません。貸主の承諾、館内規則、他の業者の工事、退去時の条件という、契約の外にある事情を、契約書の中に取り込んでおくことが、紛争を減らします。そのためには、契約の前に、賃貸借契約の関連条項と、ビルの工事の規程を入手し、工事区分と承諾の範囲を、図面と合わせて確認します。契約書の条項の全体を点検する視点としては、建設業法19条の記載事項と検査・引渡し条項が使えます。
よくあるご質問
A工事・B工事・C工事は、法律で決まっている区分ですか。
法律に定義のある区分ではありません。オフィスビルや商業ビルの賃貸借契約や、貸主・管理会社が定める工事の規程の中で用いられる慣行上の区分で、ビルによって範囲や発注の仕方が異なります。一般に、A工事は貸主が発注し費用を負担する工事、B工事は借主が費用を負担するが貸主指定の業者が施工する工事、C工事は借主が発注し業者も借主が選ぶ工事とされますが、個別のビルでは、そのビルの賃貸借契約と工事の規程を確認する必要があります。
貸主の承諾がないまま、テナント内装工事を始めてもよいですか。
避けるべきです。民法616条は594条1項を賃貸借に準用しており、借主は、契約または目的物の性質によって定まった用法に従って使用しなければなりません。賃貸借契約に、内装工事や造作の取付けの前に貸主の承諾を要する旨の定めがあることが多く、承諾のない着工は、工事の中止や原状回復を求められるおそれがあります。請負契約では、承諾書の写しと対象図面の交付を、着工の前提条件にしておきます。
夜間や休日にしか工事ができないとき、契約書には何を書けばよいですか。
建設業法19条1項4号は、工事を施工しない日または時間帯の定めをするときは、その内容を書面に記載することを求めています。作業できる日と時間帯を契約書または別紙に書き、その制約に伴う工期の日数と、夜間・休日の割増の費用を、どちらが負担するかを決めます。館内規則の変更や、貸主・管理会社からの追加の要求に対応する費用と工期の扱いも、あわせて決めておきます。
内装工事で付けた造作は、退去のときに誰の所有になりますか。
民法242条は、不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得すると定めています(権原によって附属させた他人の権利を妨げない)。取り付けた内装が建物に付合したかは、取付けの態様で変わり、条文だけでは決まりません。退去のときの撤去や引継ぎの条件は、賃貸借契約の原状回復や造作の条項で決まるので、内装を発注する前に確認します。
内装工事の一部を下請に出すとき、気をつけることはありますか。
下請との契約も、建設業法19条の書面が必要です。請け負った工事を一括して他人に請け負わせることは、原則として禁止されています(22条)。元請負人は、注文者から請負代金の支払を受けたときは、相応する下請代金を、支払を受けた日から1か月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払う必要があります(24条の3第1項)。貸主指定の業者の工事の遅れが下請に及ぶ場合の扱いも、元請と下請の契約で決めておきます。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の契約への当てはめは、工事の内容や取引の実態によって結論が変わることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索