設備工事の登録・指定と、提携契約書での名義の扱い

登録や指定を持つ者が、自分の名と責任で施工する形に組み直すのが、適法な提携の出発点です。番号を貸して使わせる形は、名義の貸し借りと評価される余地があります。

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識別番号を一方が提供し、他方が利用するという定義の一行が、登録や指定を持つ者が実際には施工しない提携に読まれるおそれがあります。

このページの要点

  • 水道・電気・浄化槽・建設業は、それぞれ別の制度。ある登録や指定が、他の工事の資格になるわけではない。
  • 電気工事業法22条は、請け負った電気工事を電気工事業者でない者に請け負わせることを禁じる。浄化槽法29条3項は、設備士の実地監督を求める。
  • 契約書には、誰が登録・指定を持ち、誰が施工し、どの技術者が管理するのかを書く。行政への申請と届出は、持つ者が自ら行う。
  • 個別契約が口頭で成立するとしても、建設工事には19条の書面が要る。登録や指定が失われたときの通知・解除・引継ぎも書いておく。

結論:番号を「貸す」のではなく、登録や指定を持つ者が、自分の名と責任で施工する提携に組み直す

水道の工事、電気の工事、浄化槽の工事は、建設業の許可とは別に、工事の種類ごとの登録や指定が求められることがあります。そのため、設備工事を扱う会社どうしの提携では、登録や指定は持っているが施工する人手がない会社と、施工はできるがその登録や指定を持っていない会社、という組み合わせが生まれます。そこで、登録や指定の番号を提携先に提供して使わせる、番号を共有して工事を受ける、という建付けが、契約書に出てきます。

この建付けは、書き方次第で、登録や指定の制度が予定していない「名義の貸し借り」と評価されるおそれがあります。このページは、名義の貸し借りを勧めるものではありません。適法な提携を組み立てるために、工事の種類ごとに条文が誰に何を求めているのか、契約書で「誰が登録や指定を持ち、誰が施工し、誰が責任を負うのか」をどう書くのか、禁止される形との線引きをどこに引くのかを整理します。

指定給水装置工事事業者の指定は水道事業者(市など)が行う制度であり、実際の運用は、指定をした水道事業者の定めや手引きに左右されます。条文だけでは決まらないため、個別に水道事業者の資料で確認する必要があります。許可の有無と19条の書面については建設業法19条の記載事項、元請と下請の関係は下請契約書・一人親方の契約書で扱っています。

工事の種類ごとの登録・指定:誰に何が求められているか

最初に、工事の種類ごとの制度を並べます。建設業の許可を受けている事業者に対する特例の有無が、制度ごとに違う点にも注意が必要です。

工事の種類と、事業者に求められる登録・指定

工事の種類根拠事業者に求められること技術者の関与
建設業(工事全般)建設業法3条1項政令で定める軽微な建設工事のみを請け負う場合を除き、許可が必要。営業所ごとの専任技術者、工事現場の主任技術者など(別のガイドで扱う)。
電気工事電気工事業法3条1項電気工事業を営むには、営業所の所在地に応じて経済産業大臣又は都道府県知事の登録が必要。建設業者は登録に代わり届出(34条)。一般用電気工事の営業所ごとに主任電気工事士を置く(19条)。作業に従事できる者も資格で限られる(21条)。
浄化槽工事浄化槽法21条1項浄化槽工事業を営むには、都道府県知事の登録が必要。一定の建設業の許可を受けた者には登録は不要(33条)。営業所ごとに浄化槽設備士を置き(29条1項)、工事は浄化槽設備士が実地に監督する(同条3項)。
給水装置工事(水道)水道法16条の2、25条の2〜25条の4水道事業者が、給水区域で給水装置工事を適正に施行できると認める者を指定する。指定の申請は水道事業者に行う。事業所ごとに給水装置工事主任技術者を選任する(25条の4第1項)。

表の登録・指定は、工事の種類ごとに別の制度です。ある工事で登録や指定を受けていることは、他の種類の工事の資格にはなりません。

電気工事業法は、電気工事業を営む者に二つのことを求めています。一つは、業の登録(3条1項)。もう一つは、作業に従事させる者の資格です。登録電気工事業者は、一般用電気工事の作業に、第一種電気工事士又は第二種電気工事士でない者を従事させてはならない(21条2項)とされ、その違反は、登録の取消し又は事業停止の事由になります(28条1項3号)。浄化槽法も同様に、浄化槽工事業者に、営業所ごとの浄化槽設備士の設置と、工事の実地監督を義務づけています(29条1項・3項)。

契約書を書く側から見れば、これらの条文は、「誰が登録や資格を持っているか」が、そのまま「誰が施工できるか」を決めるということを意味します。持っていない側が施工を引き受ける契約は、書面の上では成立しても、法の求める体制を満たしません。

名義の貸し借りと評価される形、評価されにくい形

水道法・電気工事業法・浄化槽法・建設業法は、それぞれの登録・指定・許可の仕組みの中で、名義の貸し借りを許さない形を採っています。工事の種類ごとに、その仕組みを整理します。

  • 水道法:指定の基準として、事業所ごとに給水装置工事主任技術者として選任されることとなる者を置くことが求められる(25条の3第1項1号)。事業者は事業所ごとに主任技術者を選任し、水道事業者に届け出る(25条の4第1項・2項)。また、省令の運営基準では、工事ごとに主任技術者のうちから職務を行う者を指名することなどが求められる(水道法施行規則36条1号)。基準に従った適正な事業の運営ができないと認められるとき、不正の手段により指定を受けたときは、水道事業者は指定を取り消すことができる(水道法25条の11第1項4号・8号)。
  • 電気工事業法:電気工事業者は、その請け負った電気工事を、電気工事業を営む電気工事業者でない者に請け負わせてはならない(22条)。違反は、三月以下の拘禁刑若しくは三万円以下の罰金又はその併科の対象(37条2号)。登録電気工事業者には、登録の取消し又は事業停止の事由にもなる(28条1項3号)。
  • 浄化槽法:浄化槽工事は、浄化槽設備士が実地に監督し、又はその資格を有する浄化槽工事業者が自ら実地に監督しなければならない(29条3項)。違反は三十万円以下の罰金(64条11号)。
  • 建設業法:建設業者は、請け負った建設工事を、いかなる方法をもってするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない(22条1項)。委託その他いかなる名義をもってするかを問わず、報酬を得て建設工事の完成を目的として締結する契約は、請負契約とみなされる(24条)。

ここから、契約書の組み立ての線引きが見えてきます。登録や指定を持つ者が、実際にその工事を施工し、技術者が現場に関与し、工事の責任を負う形は、制度の予定する形です。反対に、登録や指定を持たない者が、番号を使って自分の名で工事を受注し、登録や指定を持つ者は実際の施工や管理に関与せず、番号の使用料を受け取るだけの形は、制度の予定する形から外れ、名義の貸し借りと評価される余地が大きいと考えられます。この中間にある提携は、現場への関与の度合いで評価が分かれます。評価は、契約書の文言だけでなく、実態で決まる点に注意してください。

提携の形の違い:責任の所在をたどる

  1. A 登録・指定を持つ側が受注し、施工する自社の名と責任で受注し、主任技術者を指名して施工する。必要な範囲で提携先に協力を求める。制度の予定する形。
  2. B 登録・指定を持つ側が受注し、施工を提携先に委ねる電気工事や浄化槽工事では、電気工事業者でない者や、設備士の実地監督のない者に施工させることはできない。委ねる相手の資格が決め手になる。
  3. C 持たない側が、番号を借りて受注する施工する者が登録や指定を持たず、持つ者の関与が名目だけの形。名義の貸し借りと評価される余地が大きい。

契約書にAの形と書いても、実態がCであれば、書面は実態を隠すだけで、守ってはくれません。

書き方の例:工事番号を提供し、委託者側が使う建付けの直し方

設備工事の提携契約書では、指定や登録に結びつく番号などの識別情報を、一方の会社が提供し、委託する側の会社が利用する、という建付けが書かれることがあります。識別情報を委託する側が利用することを前提に定義を置き、その利用の適法性のリスクを提供する側が負う、という書き方も見られます。この建付けは、指定給水装置工事事業者の制度との関係で、名義の貸し借りと評価される余地があり、見直しを要する書き方の典型です。

この建付けを、指定事業者が自ら施工する形に組み直すとすれば、たとえば次のようになります。

REV.書き方の例(一般的な例) 工事番号の共有を、自社の指定事業者としての施工に組み直す

1番号の位置づけ

よくある書き方番号などの識別情報を、提供する側から委託者に提供し、委託者が利用する前提で定義する。
整えた書き方「指定番号」とは、乙が指定給水装置工事事業者として、水道事業者から付与された番号をいう。指定番号は乙に帰属し、乙が自らの施工及び申請に使用するものとし、甲その他の第三者に使用させ、又は貸与しない。

理由番号の帰属と使用者を、乙に固定する。提供・利用の言葉を外し、番号の使用を乙の工事に限る。

2施工の主体

よくある書き方乙は、本業務を、甲の指示に従って遂行する。
整えた書き方乙は、乙の名と責任において、乙が選任した給水装置工事主任技術者の技術上の管理のもとで、本業務のうち給水装置工事を施行する。工事ごとに、乙は、水道事業者に対する申請及び届出を自ら行う。

理由指定事業者が実際に施工し、主任技術者を指名し、申請も自分で行うことを書く。委託者の指示に従うだけの請負にしない。

3連絡の経路

よくある書き方甲は、工事番号を用いて、水道事業者に申請及び届出を行うことができる。
整えた書き方水道事業者への申請、届出及び照会は、乙のみが行う。甲は、乙を通じて必要な情報の提供を受ける。

理由行政との窓口を指定事業者に限る。委託者が行政に直接申請する形を残さない。

4情報の取扱い

よくある書き方(番号に付随する情報の第三者提供についての定めなし)
整えた書き方乙が甲に開示する指定番号その他の識別情報は、本契約の目的のためにのみ用い、第三者に開示、提供しない。

理由番号と、これに付随する情報の目的外使用と第三者提供を禁じる。

誰が登録・指定を持ち、誰が施工するかを、契約書に書く

適法な提携の契約書では、冒頭に近い条項で、次の三つを明らかにします。第一に、各工事について、登録や指定を持つ者は誰か。第二に、その者が実際に施工する範囲と、その者の技術者の氏名または役職。第三に、持たない者が行うことの範囲(資材の手配、顧客対応、現場の補助など、登録が必要でない作業に限る)。

条文例

第○条(登録・指定及び施工体制)

  1. 乙は、本契約の締結時及び本契約の期間中、次の各号の登録、指定又は資格を有していることを表明し、保証する。(1)給水装置工事に係る指定給水装置工事事業者の指定(指定を受けた水道事業者及び区域を別紙に記載する。)(2)電気工事業の業務の適正化に関する法律に基づく登録又は届出(3)浄化槽法に基づく浄化槽工事業の登録及び浄化槽設備士の設置
  2. 乙は、前項の各工事を、乙の名と責任において、乙が選任した主任技術者、主任電気工事士又は浄化槽設備士の技術上の管理又は実地の監督のもとで施工する。乙は、前項の工事の全部又は主要な部分を、第三者に請け負わせてはならない。
  3. 甲は、前項の工事について、資材の手配、顧客への連絡及び日程の調整、現場の補助その他前項の登録、指定又は資格を要しない作業を行うことができる。
  4. 乙は、第1項の登録、指定又は資格について、取消し、停止、失効、更新の未了その他その効力に影響する事由が生じたとき、又は生じるおそれがあるときは、直ちに甲に通知する。

第3項の「登録、指定又は資格を要しない作業」が何を指すかは、個別の制度で異なります。範囲は、条文と、指定をした水道事業者・登録行政庁の資料で確認してください。

電気工事業法には、建設業の許可を受けた建設業者については、登録に関する規定を適用せず、届出を要するとする特例があります(34条)。また、浄化槽法にも、一定の建設業の許可を受けた者に、登録の規定を適用しない特例があります(33条)。契約書の表明保証の項に「登録又は届出」「登録又は建設業の許可」と書き分けているのは、このためです。

個別契約の成立と、建設業法19条の書面

設備工事の基本契約では、工事の依頼がその都度、電子メールや口頭で行われることが少なくありません。基本契約書には、個別契約は電子メール、電磁的方法、口頭その他の方法により、内容の合意が成立した時点で成立し、注文書、発注書、請書の作成又は交付の有無は、個別契約の成立及び効力に影響を及ぼさない、という趣旨の条項が置かれることがあります。

民法では、契約の成立に書面の作成その他の方式は原則として必要ありません(522条2項)。他方で、建設業法19条1項は、建設工事の請負契約の当事者に、契約の締結に際して、工事内容、請負代金の額、工事着手の時期及び完成の時期などの16の事項を書面に記載し、署名又は記名押印して相互に交付することを求めています。水道の工事は建設工事にあたり、書面に代えて電磁的方法をとるときも、同条3項の要件を満たす必要があります。「成立に書面は不要」と「19条の書面は必要」は、両立する別の規律です。基本契約に、個別契約の成立の定めだけがあり、19条の書面を整える手当てが書かれていないと、成立と書面のあいだに空白が生じます。

手当ての方法は単純で、基本契約に、個別の工事について、注文書と請書(又は発注と受諾の電磁的記録)に19条1項の事項を記載して取り交わすこと、基本契約に書いてある事項は個別の書面に重ねて書かなくてもよいこと、を書きます。個別の追加や変更についても、書面で行う旨を書きます。追加工事・変更工事の書面に同じ考え方があります。

違反があったときの解除と損害の負担

登録や指定を持つ側の登録・指定が取り消されたとき、提携の前提が崩れます。電気工事業法では、登録電気工事業者が22条に違反したときは、登録の取消し又は事業停止の事由とされています(28条1項3号)。水道法でも、水道事業者は、基準に従った適正な運営ができないと認められるとき、不正の手段により指定を受けたときなどに、指定を取り消すことができます(25条の11第1項)。提携先の登録や指定が取り消されても、工事は残ります。契約書では、次の点を決めておきます。

  • 通知の義務:登録・指定の取消し、停止、更新の未了、主任技術者の欠員、行政からの指導を、直ちに相手方に通知する。
  • 解除:登録・指定が失われたとき、又は表明保証に反することが判明したときは、催告なく解除できる。
  • 進行中の工事:すでに受注した工事を、誰がどのように引き継ぐか。引き継げない場合の、施主への説明と費用負担。
  • 損害の負担:違反が原因で相手方が受ける、行政処分の不利益、施主への賠償、代替の施工者の費用を、違反した側が負担すること。責任の範囲に上限を置く場合も、法令違反による損害を上限の対象外とするかを決める。
  • 再委託の禁止:登録や指定を持つ者が、その工事を無資格の者に再委託しないこと。電気工事では22条があり、契約の禁止条項は、法の禁止を契約上の義務としても確認するものになる。

起きがちなこと:番号が一人歩きして、誰が施工したのか分からなくなる

ヒヤリング点検表 提携の契約書を作る前のヒヤリング

  1. その工事に、どの登録・指定・許可が必要か。水道、電気、浄化槽、建設業の許可は別の制度。必要なものを工事の種類ごとに洗い出す。
  2. それぞれを持っているのはどの会社か。契約書の表明保証と、別紙の記載の元になる。持っていない会社の施工範囲を決める前提でもある。
  3. 実際に現場で施工し、管理する技術者は誰の従業員か。主任技術者、主任電気工事士、浄化槽設備士の所属と氏名の確認。名義だけの関与になっていないかを見る。
  4. 工事番号などの識別情報を、相手方に渡す必要が本当にあるか。渡さずに済む組み立てにできるなら、その方が安全。渡すなら、目的、範囲、連絡経路を限定する。
  5. 行政への申請や届出は、誰が行うか。指定事業者が自ら行う形にできているか。委託者が直接行う形が残っていないか。

よくあるご質問

水道工事の指定番号を提携先に使わせることは、名義貸しになりますか。

水道法の指定の制度は、事業所ごとに主任技術者を置き、工事ごとに技術者を指名し、基準に従った運営ができないときは指定を取り消すことができる仕組みです。登録や指定を持つ者が実際に施工しないまま番号だけを使わせる形は、名義の貸し借りと評価される余地が大きいため、指定をした水道事業者の資料で個別に確認する必要があります。

電気工事を請け負った会社が、他の会社に工事を回してもよいですか。

電気工事業法22条は、電気工事業者が、請け負った電気工事を、電気工事業を営む電気工事業者でない者に請け負わせることを禁じています。回す先が電気工事業者であること(登録又は届出をしていること)が前提です。違反には罰則があり(37条2号)、登録の取消し等の事由にもなります(28条1項3号)。

浄化槽の工事で、設備士が現場にいなくてもよいですか。

浄化槽法29条3項は、浄化槽工事を行うときは、浄化槽設備士に実地に監督させ、又はその資格を有する浄化槽工事業者が自ら実地に監督しなければならないとしています(これらの者が自ら工事を行う場合を除く)。違反には罰金の定めがあります(64条11号)。契約書には、設備士を置く会社と実地監督の体制を書きます。

設備工事の基本契約で、個別契約が口頭で成立するとしてもよいですか。

契約の成立そのものは、民法522条2項により書面が必須ではありませんが、建設工事の請負契約には建設業法19条の書面の交付が求められます。基本契約に口頭での成立を認める定めを置くなら、同時に、個別の工事ごとに19条1項の事項を書面又は電磁的方法で取り交わす手当てを書いておく必要があります。

提携先の登録や指定が取り消されたら、契約はどうなりますか。

契約書に定めがなければ、民法の解除や損害賠償の一般論に頼ることになります。取消し、停止、更新の未了を直ちに通知する義務、催告なしに解除できること、進行中の工事の引継ぎ、違反側の損害の負担を、あらかじめ書いておくと、取消しの日から先の混乱を小さくできます。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の契約への当てはめは、工事の内容や取引の実態によって結論が変わることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索

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